HEALTH WORDS / 用語解説
リフトバレー熱
リフトバレー熱とは、リフトバレー熱ウイルス(RVFV)によって引き起こされる、人獣共通感染症の一つである。1
本疾患は、ブニヤウイルス科フェジウイルス属に分類されるウイルスが病原体であり、主として蚊などの媒介者を介して家畜や人間に感染する。2
リフトバレー熱は1930年代にケニアのリフトバレーにおいて、羊の流産と大量死を伴う疾病として初めて確認された。1
その後、サハラ以南のアフリカ諸国を中心に流行を繰り返してきたほか、アラビア半島などアフリカ大陸外へも感染拡大が報告されている。2
主要な感染経路は、ウイルスを保有する蚊(主にヤブカ属やイエカ属など)に叮咬されることであるが、感染した家畜の血液や体液、組織などに直接接触することでも感染する。1
特に、屠畜作業や獣医療従事者、家畜の分娩介助を行う際、飛沫や血液が粘膜や傷口から侵入することでヒトからヒトへの感染はないものの、高いリスクを伴う職業感染が問題となる。2
また、加熱処理が不十分な感染動物の乳を摂取することによって感染した事例も報告されている。1
家畜における症状としては、羊、山羊、牛などの反芻動物が主な標的となり、特に幼若な動物において致死的な経過をたどることが多い。2
妊娠している家畜が感染した場合には、ほぼ100%の確率で流産を引き起こすことが知られており、畜産業に対して壊滅的な経済的打撃を与える家畜伝染病の一つである。1
一方、人間が感染した場合の臨床像は多岐にわたるが、大部分の症例は不顕性感染であるか、あるいは軽度のインフルエンザ様疾患として発症する。2
軽症例では、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、背部痛などがみられ、数日から1週間程度で回復に向かうのが一般的である。1
しかし、感染者の一部(数パーセント程度)においては重症化し、致死率を高める重篤な病態へと進展することがある。2
重症化した場合には、網膜炎を併発して視力障害や永久的な失明に至る眼病変型や、肝障害による黄疸や出血傾向を伴う出血熱型、さらには脳炎を引き起こして意識障害や神経学的後遺症を残す中枢神経症状型が挙げられる。1
特に出血熱を発症した患者や中枢神経系に異常を来した患者では、予後が不良となるケースが存在する。2
診断にあたっては、臨床症状や流行地域への渡航歴、家畜との接触歴などの疫学情報が重要視されるが、確定診断には実験室診断が必要不可欠となる。1
血液や血清を用いたRT-PCR法によるウイルス遺伝子の検出や、ウイルス分離、さらには酵素免疫測定法(ELISA)を用いた特異的抗体(IgMおよびIgG)の検出が行われる。2
治療法に関しては、現時点で特異的な抗ウイルス薬は確立されておらず、対症療法が中心となる。1
輸液管理や血圧維持、合併する臓器障害に対する支持療法が治療の基本方針となる。((国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/411-rvf-intro.html