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HEALTH WORDS / 用語解説

急性薬物中毒

Acute Drug Poisoning

急性薬物中毒とは、治療薬や違法薬物、あるいは有害な化学物質などが短時間に体内に過剰摂取された結果、生体に障害や機能不全をもたらす臨床的病態である。1

原因となる物質には、中枢神経系に作用する催眠薬、抗不安薬、抗うつ薬などの精神神経用剤のほか、解熱鎮痛薬、心血管系作用薬、農薬、家庭用品などが含まれる。2

多くの場合、自殺目的の意図的服薬や、誤飲・過量服薬(オーバードーズ)などの偶発的な原因によって引き起こされる。3

病態生理学的には、摂取された薬物が消化管などから吸収されて血中濃度が急激に上昇し、標的となる受容体や酵素系に過剰に結合することによって細胞機能の異常や代謝障害を惹起する。4

臨床症状は原因物質の薬理作用に依存し多岐にわたるが、中枢神経抑制による意識障害、呼吸抑制、血圧低下、頻脈あるいは徐脈などの循環動態の破綻が頻繁に観察される。5

重症例では、脳浮腫、肺水腫、急性腎障害、不整脈、多臓器不全に移行し、適切な治療介入が行われない場合には致命的な転帰をたどることがある。1

診断にあたっては、詳細な問診による摂取物質の特定が極めて重要であり、家族や周囲の目撃者からの情報収集や、残された薬包・容器の確認が行われる。4

臨床現場や救急医療の場では、血液検査による電解質バランスや肝機能・腎機能の評価、動脈血ガス分析、さらには尿中薬物スクリーニング検査や血中薬物濃度測定が実施される。2

急性薬物中毒に対する初期治療の基本は、気道確保、呼吸管理、循環管理を含む全身管理(ABCDEアプローチ)であり、生命維持を最優先とした蘇生処置が展開される。4

消化管除染としては、催吐、胃洗浄、および活性炭の投与が行われることがあるが、適応や禁忌を慎重に判断する必要がある。5

一部の特定の中毒物質に対しては、解毒剤(拮抗薬)が存在し、例えばオピオイドによる呼吸抑制に対するナロキソンや、ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるフルマゼニルなどが臨床的に用いられる。1

また、体内からの毒物の排泄を促進させる目的で、尿量確保のための輸液療法、尿アルカリ化療法、さらには血液透析や血液吸着法などの体外式膜型人工肺や血液浄化療法が適用される場合がある。4

身体的な救命処置が完了した後は、精神保健上の評価や心理社会的支援が不可欠であり、自殺企図が背景にある場合には精神科医や医療ソーシャルワーカーとの連携による再発防止策が講じられる。3

参考文献・出典

  1. 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/shuyaku/index.html ↩1 ↩2 ↩3
  2. 日本中毒情報センター: https://www.j-poison-ic.jp/about/poisoning/ ↩1 ↩2
  3. 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/000806497.pdf ↩1 ↩2
  4. 日本救急医学会: https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0582.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  5. 日本中毒情報センター: https://www.j-poison-ic.jp/general/chuudoku-toha/ ↩1 ↩2