HEALTH WORDS / 用語解説
付着依存性
Anchorage dependence
付着依存性とは、多くの正常な動物由来細胞が生存および増殖するために、培養液中で固体表面などの基質や足場へ付着することを必須とする性質である。1 接着依存性とも呼ばれるこの現象は、多細胞生物の組織の恒常性を維持する上で極めて重要な生体機構の一つである。2
インビトロ(試験管内)における動物細胞培養において、不死化細胞株や一部の株化細胞を除く多くの正常細胞は、培養容器の底面などに接着しなければ細胞増殖を行わない。3 さらに、これら多くの正常細胞は、足場への接着が外れるとアポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死の一種が誘導されて死亡する。2 この細胞死はアノイキス(Anoikis)として知られており、付着依存性を示す細胞が不適切な場所で生存・増殖することを防ぐ生体防衛システムとしても機能している。2
細胞が基質へ付着する際には、細胞膜上に存在するインテグリンなどの接着分子が重要な役割を果たしている。2 これらの分子が細胞外マトリックスのタンパク質を認識して結合すると、細胞内へシグナル伝達経路が活性化され、細胞周期の進行や生存を維持するための因子が誘導される。2 このように、物理的な足場からのシグナルが細胞の生存に直接結びついている点が、付着依存性の大きな特徴である。1
一方で、がん細胞などの悪性腫瘍由来の細胞においては、この付着依存性が失われる、あるいは低下することが広く知られている。2 がん細胞は足場がない浮遊状態であってもアポトーシスを回避して増殖能を維持することが可能であり、この性質は癌の浸潤や転移の過程において重要な因子となる。2 したがって、付着依存性の有無やその変動を調べることは、細胞の悪性化の度合いを評価する上でも極めて重要な指標となっている。2
参考文献・出典
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物資源データセンター: https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/other/animal_cell_manual.html ↩1 ↩2
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 J-GLOBAL: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906029302636224 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物資源/細胞培養マニュアル: https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/other/animal_cell_manual.html ↩