HEALTH WORDS / 用語解説
先天性トキソプラズマ感染症
Congenital toxoplasmosis
先天性トキソプラズマ感染症とは、妊娠中の母親がトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に初感染し、胎盤を介して胎児へと母子感染(垂直感染)することによって引き起こされる疾患である。1 トキソプラズマは原虫の一種であり、猫などの終宿主の腸管内で有性生殖を行い、オーシストと呼ばれる卵のような形をとって糞便中に排泄される。 ヒトを含む様々ないわゆる中間宿主には、このオーシストに汚染された水や食物の経口摂取、あるいは加熱不十分な肉(豚肉、羊肉、牛肉など)に含まれるシストの摂食を介して感染が成立する。2
妊娠初期に妊婦が初めてトキソプラズマに感染した場合、胎児への感染率自体は比較的低いものの、いったん胎児が感染すると流産、死産、あるいは脳内石灰化、網脈絡膜炎、水頭症、精神発達遅滞といった重篤な先天異常や臨床症状を引き起こすリスクが高くなる。1 これに対して、妊娠後期に近づくにつれて胎児への感染率は高くなる傾向にあるが、出生時には無症状である潜在感染の割合が増加する特徴がある。 しかし、出生時に症状が認められない場合であっても、小児期から成人期にかけて網脈絡膜炎などの眼症状や神経学的異常が遅発性に発現または再発することがあるため、長期的な経過観察と眼科的検査が重要となる。2
診断にあたっては、母親の血清学的小検査(IgG抗体およびIgM抗体の測定、アビディティ検査など)による急性期感染の評価が行われるほか、出生後の新生児における特異的IgM抗体やIgA抗体の検出、あるいは羊水や新生児の脳脊髄液、末梢血等を検体としたPCR法によるトキソプラズマ遺伝子の検出が用いられる。1 治療および母子感染の予防に関しては、妊娠中の女性において加熱不十分な肉の摂取を避けること、猫の糞便に接触した後には手洗いを徹底することなどの衛生学的対策が一次予防として極めて重要である。2 また、母親の初感染が確認された場合や胎児感染が疑われる場合には、スピラマイシンなどの抗菌薬の投与によって胎児への垂直伝播を軽減させる試みや、感染児に対するピリメタミンおよびスルファジアジン、ロイコボリンの併用療法などによる薬物療法が実施される。1