HEALTH WORDS / 用語解説
切除不能
Unresectable
切除不能とは、悪性腫瘍(がん)などの病変に対して、外科手術による完全な摘出が技術的あるいは解剖学的に不可能であると判断される状態を指す。1
臨床現場において切除不能と判断される背景には、いくつかの主要な要因が存在する。第一に、腫瘍が重要な血管や神経叢、あるいは不可欠な主要臓器へ深く浸潤している場合が挙げられる。このような状況下で無理に外科手術を試みた場合、術中に致死的な出血を引き起こすリスクや、術後の著しいQOL(生活の質)の低下、あるいは生命の維持に関わる重大な合併症を招く恐れがあるため、外科的切除は回避される。2
第二に、腫瘍が原発巣の領域を超えて広く転移している場合である。遠隔転移や広範な多発リンパ節転移を伴う進行期においては、仮に原発巣のみを手術によって切除しても、患者の予後改善や根本的な治癒に対する寄与が乏しいと医学的に評価される。こうした全身管理および病期(ステージ)の観点から、局所治療である外科手術の適応外とされるケースが多い。1
さらに、患者側の要因として、高齢であることや、心疾患、肺疾患、腎機能障害などの重篤な併存疾患を有している場合があげられる。これにより、全身麻酔および長時間の侵襲的な外科手術に耐えられないと判断された場合も、結果として切除不能と見なされることがある。2
切除不能と診断された悪性腫瘍に対しては、根治手術を目的とした治療方針から転換が図られる。多くの場合、薬物療法(化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)や放射線療法、あるいはこれらの治療法を組み合わせた集学的治療が選択される。薬物療法や放射線療法によって腫瘍の縮小が得られた場合には、コンバージョン手術として再び外科手術の適応が検討されることもある。2
また、切除不能な進行がんや再発がんに対しては、腫瘍の縮小や治癒を目的とするのではなく、疼痛や閉塞症状などの苦痛を緩和し、QOLの維持・向上を目的とした緩和ケアや支持療法が治療の中心に据えられる。このように、切除不能という病態の評価は、患者の生命予後、身体機能、および治療選択肢の決定において極めて重要な意義を持っている。1
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp/public/qa_ov/qa_08.html ↩1 ↩2 ↩3
- 日本食道学会 食道癌診療ガイドライン: https://www.jbes.gr.jp/guideline/pdf/esophageal_cancer_2022_03.pdf ↩1 ↩2 ↩3