HEALTH WORDS / 用語解説
創薬標的
Drug Target
創薬標的とは、医薬品が作用してその薬理効果を発揮するための生体内の分子基盤のことである。1 主にタンパク質や核酸などの生体高分子が該当し、疾患の原因や病態の進展に関与する分子が選定される。2
現代の創薬プロセスにおいて、適切な創薬標的の同定と検証(ターゲットバリデーション)は、新薬開発の成否を握る極めて重要なステップである。1 疾患特異的に機能異常を起こしている分子や、病態の維持に必須な受容体、酵素、イオンチャネルなどが標的として研究されてきた。2 これらの分子の機能を低分子化合物や抗体医薬品などの医薬品によって修飾・制御することで、治療効果をもたらすことを目的としている。1
ヒトゲノム計画の完了以降、ゲノム科学やトランスクリプトミクス、プロテオミクスなどの網羅的な解析技術が発展したことにより、従来よりも多様かつ網羅的な標的探索が可能となった。2 これにより、これまで創薬の対象とすることが困難であった難治性疾患関連分子や、従来の手法では阻害しにくいタンパク質なども新たな創薬標的として浮上している。1
一方で、同定された分子が生体内で実際にどのような役割を果たしているか、またそれを阻害あるいは活性化することが本当に治療につながるのかを検証することは容易ではない。1 不十分な検証のまま開発を進めた場合、臨床試験の段階で有効性が示されなかったり、予想外の毒性や副作用が発現したりするリスクが高まる。2 そのため、基礎医学や分子生物学の知見に基づき、遺伝子改変動物モデルや患者由来細胞を用いた多角的な検証実験が行われる。1
近年のバイオ医薬品や核酸医薬、遺伝子治療などの技術革新に伴い、創薬標的の概念もさらに拡張している。2 従来の酵素の活性部位や受容体の結合部位を狙うアプローチだけでなく、タンパク質同士の相互作用の阻害や、特定のメッセンジャーRNAを直接分解・制御するといった多様なアプローチが採られている。1 これにより、かつてはアンドラッガブル(創薬困難)とされていた標的分子に対しても、新薬創出の可能性が広がっている。2