ホーム好中球外トラップ

HEALTH WORDS / 用語解説

好中球外トラップ

Neutrophil extracellular traps: NETs

好中球外トラップとは、好中球が自身の細胞外へDNAやヒストン、抗菌ペプチドなどを網状の構造物として放出し、病原体を捕捉して不活化・排除する生体防御機構のことである。1

好中球は白血球の一種であり、感染症などの生体侵襲に対して最前線で防御にあたる自然免疫の主要な細胞である。2

従来、好中球の主要な抗菌メカニズムとしては、食細胞としての貪食作用や、顆粒に含まれる酵素や活性酸素種(ROS)を用いた細胞内殺菌が知られていた。1

しかし、2004年に好中球外トラップが発見され、細胞外においても病原体を捕らえて処理する新たな防御機構が存在することが明らかになった。1

好中球外トラップの形成過程(NETosis)においては、好中球の核膜や顆粒の膜が崩壊し、脱凝縮したクロマチンDNAが細胞質成分と混合される。2

この網状の構造物には、エラスターゼやミエロペルオキシダーゼなどの抗菌タンパク質が付随しており、細菌や真菌、ウイルスなどの病原微生物を物理的にからめ取るとともに、高濃度の抗菌物質で効率的に攻撃する。1

一方で、好中球外トラップの過剰な産生や分解の遅延は、宿主の組織に対して有害な影響を及ぼすことが指摘されている。3

放出されたクロマチンやヒストン、プロテアーゼなどが血管内皮細胞を刺激し、血栓症や自己免疫疾患、敗血症における臓器障害などの病態増悪に関与することが基礎研究および臨床研究で示されている。3

このように、好中球外トラップは生体防御において不可欠な役割を果たす一方で、その制御破綻が様々な疾患の病態形成につながる両刃の剣としての側面を持っている。3

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802213708899808 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 国立研究開発法人 科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/pr/announce/20190521/index.html ↩1 ↩2
  3. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202008892419515 ↩1 ↩2 ↩3