HEALTH WORDS / 用語解説
渡航歴
Travel history
渡航歴とは、個人が過去に自国を出国し、他国や特定の地域へ移動し滞在した履歴のことである。1
医療や公衆衛生の分野において、渡航歴の確認は感染症の診断および疫学的調査を行う上で極めて重要な手順の一つと位置づけられている。2
多くの感染症には特有の潜伏期間が存在しており、海外渡航の有無や滞在先を詳細に把握することは、医師が輸入感染症を疑うための重要な手がかりとなる。1
例えば、マラリア、デング熱、チカ熱、黄熱などの蚊媒介感染症や、腸管出血性大腸菌感染症などの消化器系感染症は、地域によって流行状況が大きく異なる。3
そのため、発熱や下痢などの症状を訴えて医療機関を受診した患者に対して、問診時に正確な渡航歴を聴取することが、迅速な鑑別診断と適切な治療方針の決定に直結する。4
また、新興感染症や再興感染症の国内流入および水際対策においても、渡航歴情報の収集は必須の基盤情報とされる。5
近年のグローバル化に伴うヒトやモノの移動の活発化により、世界保健機関 (WHO)などの国際機関も、疾病の早期発見と拡大防止の観点から、国境を越えた移動における健康状態の監視と渡航歴の記録の重要性を強く強調している。6
臨床現場や保健所などの行政機関では、患者の職業や出国から帰国までのスケジュール、立ち寄った具体的な地域、現地の滞在環境、動物との接触歴や飲食の状況などを総合的に含めた広い意味での渡航歴が調査される。7
このように、渡航歴は個人の健康管理のみならず、公衆衛生の維持および集団感染の防止を図るうえで欠かすことのできない基本的かつ重要な医学的情報である。4
参考文献・出典
- 厚生労働省検疫所 FORTH: https://www.forth.go.jp/useful/qa/qa01.html ↩1 ↩2
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennjoujohou/430-idwr/related/7542-idwr-kanren-781.html ↩
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/2023/5225-5203r.html ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html ↩1 ↩2
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kansenshou09/index.html ↩
- 厚生労働省検疫所 FORTH: https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2019/01281136.html ↩
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/malaria/2080-idsc/related/8844-iasr-malaria-201904.html ↩