ホーム頸動脈分岐部

HEALTH WORDS / 用語解説

頸動脈分岐部

Carotid bifurcation

頸動脈分岐部とは、総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈とに分かれる解剖学的部位のことである。1

ヒトの血管系において、総頸動脈は心臓から頭頸部へ向けて血液を供給する主要な動脈であり、通常は第4頸椎から第6頸椎の高さ、あるいは甲状軟骨の上縁付近において内頸動脈と外頸動脈の2方向に分岐する。1 この分岐する領域が「頸動脈分岐部」と呼ばれ、脳への主要な血流路である内頸動脈と、顔面や頭皮などの頭蓋外組織へ分布する外頸動脈への血流の分配が行われる重要な血管構造となっている。2

頸動脈分岐部の近傍には、循環器系の調節において極めて重要な役割を果たす受容器が存在している。 その一つが内頸動脈の起始部局所にある頸動脈洞であり、ここは血圧の変化を感知する圧力受容器として機能する。1 血圧が上昇すると頸動脈洞の壁が伸展され、その機械受容器が刺激されて迷走神経および舌咽神経を介して延髄の心臓血管中枢へ神経インパルスが伝達され、反射的に心拍数の減少や血管拡張を引き起こして血圧を低下させる。3 もう一つが両側総頸動脈の分岐部付近に位置する頸動脈小体であり、こちらは化学受容器として機能する。1 動脈血中の酸素分圧の低下、二酸化炭素分圧の上昇、あるいは水素イオン濃度(pH)の低下といった化学物質的変化を感知し、呼吸中枢を刺激して呼吸運動を促進させることで体液の恒常性維持に寄与している。3

臨床医学的観点において、頸動脈分岐部は動脈硬化症の好発部位として非常に高い重要性を持つ。2 この部位は解剖学的に血流の渦やずり応力(せん断応力)の変動が生じやすい形態をしており、脂質代謝異常や高血圧、喫煙などの危険因子が重なることで動脈硬化性プラークが形成されやすい。2 頸動脈分岐部に形成されたプラークによって血管腔が狭窄すると頸動脈狭窄症となり、脳へ向かう血流が著しく低下する。2 さらに、このプラークの表面が破綻して血栓が形成されたり、プラークの破片が血流に乗って末梢の脳血管へ流出したりすることで脳梗塞(脳虚血発作やアテローム血栓性脳梗塞)を引き起こす原因となる。2

そのため、頸動脈分岐部は脳卒中の予防および診断において精密な評価がなされる部位である。2 超音波検査(エコー検査)を用いることで、侵襲を伴うことなく頸動脈分岐部の血管壁の厚さ(IMT: 内中膜肥厚度)の測定、プラークの性状評価、および血流速の計測や狭窄率の評価を行うことができる。2 また、より詳細な血管の立体構造や狭窄の程度を評価する際には、磁気共鳴血管撮影(MRA)やCTアンギオグラフィー(CTA)、脳血管造影検査などの画像診断が実施される。2 高度な狭窄や脳梗塞の発症リスクが高い病変に対しては、内科的治療としての抗血小板療法やスタチン等の薬物療法に加え、外科的治療として頸動脈分岐部のプラークを直接切除する頸動脈内膜剥離術(CEA)や、カテーテルを用いてステントを留置する頸動脈ステント留置術(CAS)が行われることがある。2

参考文献・出典

  1. 解剖学用語: http://www.kazue.co.jp/anatomical/p260-261.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 脳卒中データバンク: https://www.jsts.gr.jp/jsts2021/pdf/jsts2021_01_03.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
  3. 南山堂 医学大辞典: https://www.nanzando.com/ijidain/ ↩1 ↩2