HEALTH WORDS / 用語解説
ADL
Activities of Daily Living
ADLとは、日本語で日常生活動作と呼ばれる概念であり、人間が自立した生活を送るために毎日行う基本的かつ不可欠な身体動作群を指す言葉である。1
ADLの概念はリハビリテーション医学や老年医学、看護学などの領域において極めて重要な指標として広く用いられている。1
具体的にどのような動作が含まれるかについては、食事、更衣(衣服の着脱)、入浴、排泄、移動、整容(洗顔や歯磨きなど)といった、生存および社会生活の維持に直結する最小限の自己ケア活動が挙げられる。1
これらは疾患や障害、加齢などによってどのような影響を受けているかを評価するための基準となる。1
ADLの評価は、患者や高齢者の心身機能の状態を客観的に把握し、リハビリテーションの目標設定を行う上で不可欠である。1
また、必要な介護の程度を推計したり、医療保険や介護保険などの制度におけるサービス支給量を決定したりするための重要な根拠情報としても活用されている。1
臨床現場や学術研究において、ADLを測定・評価するための評価尺度(スケール)がいくつか開発され、標準化されている。2
その代表的なものとして、Katz Index(カッツ指数)やBarthel Index(バーセルインデックス)などが挙げられる。2
Katz Indexは、入浴、更衣、トイレ使用、移動、排泄コントロール、食事の6つの項目について、それぞれ自立しているか介助が必要かを判定し、日常生活全体の自立度を段階的に評価する手法である。2
一方、Barthel Indexは、食事、移乗、整容、トイレ使用、入浴、移動、階段昇降、着脱、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を対象とし、それぞれの動作における介助量を点数化して合計スコアを算出するものである。2
これらの評価尺度を用いることにより、医療従事者やケアスタッフの間で患者の状態像を正確に共有することが可能となる。2
さらに、リハビリテーションの経過に伴う機能回復の推移や、治療介入の効果を時系列で比較・検証するための客観的指標としても極めて有用である。2
ADLの低下は、寝たきり状態への進行や要介護度の重度化を招く直接的な要因となるため、早期の発見と適切なリハビリテーション、生活環境の調整が極めて重要視されている。1
なお、ADLと関連して用いられる概念としてIADL(手段的日常生活動作)が存在する。1
IADLは、ADLよりもさらに高次な活動を指し、買い物、調理、服薬管理、金銭管理、交通機関の利用、電話の応対など、地域社会において自立した生活を営むために必要な能力を含んでいる。1
一般的に、加齢や疾患による身体的・精神的機能の低下が生じた場合、まずIADLのような高次な動作から障害され、その後に基本的ADLの低下が進行するという特徴がある。1
このため、高齢者の生活機能を評価する際には、基本的ADLだけでなくIADLの状態も含めた総合的なアセスメントが行われる。1
このような背景から、現代の超高齢社会における医療、福祉、介護の現場において、ADLの維持および向上は、QOL(生活の質)の担保と健康寿命の延伸を図る上での中心的な課題となっている。1