HEALTH WORDS / 用語解説
CHIP
Clonal Hematopoiesis of Indeterminate Potential
CHIPとは、明確な血液疾患の兆候がないにもかかわらず、体細胞突起(体細胞変異)を獲得した造血幹細胞がクローン性増殖を起こす加齢性の病態である。1 2
CHIPは日本語で「意義不明確なクローン性造血」と訳されることがあり、主に高齢者において高頻度で観察される現象である。2 1
健康な成人を対象とした大規模なゲノム解析研究において、CHIPは年齢とともにその有病率が上昇することが明らかにされている。2 1
通常、造血幹細胞は多様な血球を産生するが、加齢などの要因により特定の細胞が遺伝子変異を伴って優位に増殖するクローンを形成する。1 2
CHIPに関連する代表的な遺伝子としては、DNMT3A、TET2、ASXL1などが知られており、これらはエピゲノム制御や転写調節に関与している。2 1
これらの遺伝子変異を持つクローンが存在するだけでは、直ちに白血病などの血液悪性腫瘍と診断されるわけではない。1 2
しかしながら、CHIPを有する個体は、将来的に骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病といった血液疾患を発症するリスクが上昇することが知られている。2 1
さらに、CHIPは血液がんの発症リスクを高めるだけでなく、動脈硬化症や冠動脈疾患などの心血管疾患の発症リスクおよび死亡率をも独立して高めることが近年の疫学研究で示されている。1 2
これは、変異を保有する白血球などの免疫細胞が炎症性サイトカインを過剰に産生し、全身性の慢性炎症を惹起することが主な機序の一つとして想定されている。2 1
CHIPの診断には、次世代シークエンサーを用いた高感度な遺伝子解析技術が必要とされ、血液や骨髄のDNAサンプルから変異細胞の割合(バリアント対立遺伝子頻度)が評価される。1 2
現在のところ、無症状のCHIP保有者に対する標準的な治療介入法は確立されておらず、生活習慣病の管理や心血管イベントの予防を中心とした経過観察が行われることが一般的である。2 1