HEALTH WORDS / 用語解説
KCNH2
KCNH2とは、ヒトの染色体7番目長腕(7q36.1)に位置し、心臓の電気生理学的活動においてきわめて重要な役割を果たす遺伝子である。1 この遺伝子は、電位依存性カリウムチャネルの構成サブユニットであるKv11.1(別名hERG)をコードしている。2
KCNH2遺伝子によって産生されるタンパク質は、心筋細胞の細胞膜に存在し、カリウムイオンを細胞の外へ透過させるチャネルを形成する。3 このカリウム電流(遅延整流性カリウム電流の急速成分である$IKr$)は、心臓の活動電位の再分極過程において中心的な役割を担っており、心筋が次の収縮に向けて電気的興奮を静めるために不可欠である。4
KCNH2遺伝子の変異や機能異常は、心臓の電気信号の伝導に異常をきたし、不整脈を引き起こす原因となることが知られている。4 特に、この遺伝子の変異はQT延長症候群(具体的にはLQT2型)の主要な原因の一つであり、心電図上でのQT間隔の延長を引き起こす。1 LQT2型の患者では、運動や強い精神的ストレス、あるいは突然の大きな音などをトリガーとして、心室頻拍の一種であるトルネード・ド・ポアンツ(Torsades de pointes)などの致死性不整脈を誘発するリスクが高まる。4
また、KCNH2遺伝子がコードするhERGチャネルは、その分子構造の特性上、多様な薬剤と結合しやすいという pharmacological (薬理学的)な特徴を持っている。2 そのため、抗不整脈薬だけでなく、抗精神病薬、抗菌薬、抗ヒスタミン薬など、心臓の病気とは一見関係のない様々な医薬品がこのチャネルを阻害することがある。5 薬剤によるKCNH2チャネルのブロックは、後天性QT延長症候群を引き起こし、重篤な副作用である心室性不整脈のリスクとなるため、新薬開発の非臨床試験段階においてhERG阻害評価は必須の安全性薬理学的試験として位置づけられている。6
参考文献・出典
- Genetics Home Reference: https://medlineplus.gov/genetics/gene/kcnh2/ ↩1 ↩2
- National Center for Biotechnology Information (NCBI): https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/3757 ↩1 ↩2
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q12809/entry ↩
- 遺伝医学研究部門: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1129/ ↩1 ↩2 ↩3
- U.S. Food and Drug Administration (FDA): https://www.fda.gov/drugs/ControlledSubstances/default.htm ↩
- Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA): https://www.pmda.go.jp/ ↩