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HEALTH WORDS / 用語解説

SREBP1c

Sterol Regulatory Element-Binding Protein 1c

SREBP1cとは、哺乳類における脂質、特に脂肪酸および中性脂肪(トリアシルグリセロール)の生合成を制御する主要な転写因子である。1

SREBPファミリーにはSREBP-1a、SREBP-1c、SREBP-2の3つのアイソフォームが存在し、その中でSREBP-1cは特に肝臓や脂肪組織などの末梢組織において糖代謝および脂質代謝の調節に中心的な役割を果たしている。2

SREBP1cの遺伝子は、インスリンやグルコースといった栄養・ホルモンシグナルによって強力に発現が誘導される特徴を持つ。3

生合成された直後のSREBP1c前駆体蛋白は小胞体膜に埋め込まれて存在しており、ステロールが欠乏した状態やインスリン刺激を受けた際などに、小胞体からゴルジ体へと輸送される。2

ゴルジ体において、2箇所のプロテアーゼ(S1PおよびS2P)による段階的な限定タンパク質分解(プロテオリーシス)を受けることで、N末端側の転写活性化ドメインが膜から遊離する。1

遊離した活性型SREBP1cは核内へと移行し、標的遺伝子のプロモーター領域に存在するステロール調節エレメント(SRE)やE-box配列に結合する。3

これにより、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)、脂肪酸合成酵素(FAS)、ステアロイルCoA脱水素酵素-1(SCD-1)など、脂肪酸合成に関わる一連の酵素遺伝子の転写を直接的に活性化する。2

また、SREBP1cは脂肪酸合成のみならず、リポ蛋白リパーゼ(LPL)や、肝臓での超低密度リポ蛋白(VLDL)産生などに関与する脂質代謝関連因子の発現も誘導する。3

生理的な状況下では、SREBP1cは摂食に応じたインスリン作用を介して肝臓における糖質から脂質への変換(de novo脂肪酸合成)を促し、エネルギーの貯蔵を効率的に進めるために働いている。1

一方で、インスリン抵抗性や肥満の状態においては、SREBP1cが過剰に活性化されることが知られている。2

SREBP1cの過剰な発現と活性化は、肝臓への中性脂肪の蓄積を引き起こし、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態形成に深く関与する。3

このように、SREBP1cは生体のエネルギー代謝や脂質恒常性の維持に不可欠であると同時に、メタボリックシンドロームに関連する各種脂質異常症や脂肪肝の分子メカニズムを理解する上でも極めて重要なタンパク質である。1

参考文献・出典

  1. Annu Rev Biochem: https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev.biochem.77.062707.154425 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. Cell Metabolism: https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4101(04)00030-2 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  3. J Clin Invest: https://www.jci.org/articles/view/11541 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4