セロトニン(serotonin) †
神経伝達物質のひとつ。5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)とも。幸せホルモンや幸福ホルモンと呼ばれることがある。*1
前駆体はトリプトファンから生合成される5-ヒドロキシトリプトファン。
メラトニンの前駆体となる。脳の覚醒に関わり、メラトニンとは逆に昼に多く分泌され、夜は分泌量が低下する。体内のセロトニンの9割は消化管(腸クロム親和性細胞)にあり、脳内の神経伝達物質として働くセロトニンは全体の約2%程度である。
人体中には約10mgが存在しています。このうち90%は小腸の粘膜に、8%は血小板に、残りの2%が脳内の神経に存在しており、僅か2%のセロトニンが精神面に大きな影響を与えていると考えられます。*2
神経におけるセロトニンの作用 †
感情の制御 †
セロトニンが不足する事で緊張や焦燥が起こり、気分障害や精神疾患などが発症することが確認されている。*3
セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンなど他の神経伝達物質の調整を行うことで、気分や感情のコントロールを行っている。
中脳のセロトニントランスポーターの密度が低い人ほど、正直で他人を信頼しやすく正義感が強い性格となることが報告されている。*4
抗うつ効果 †
抗うつ薬にはセロトニンの再取り込みを阻害して、シナプス間を伝達するセロトニンの量を増やす作用を持つものがある。*5
運動前と運動後の気分と尿中のセロトニンの量を調べた実験によると、運動後は不安が軽減して活気が向上し、尿中のセロトニンも増えていることが確認されている。
尿中セロトニン量の変化率と,脳波による前帯状回の活動量の変化率の関係は強い負の相関を認めました.つまり,セロトニン生成量が増えるほど前帯状回の活動量が軽減するということが示唆されました.*6
消化管におけるセロトニンの作用 †
電解質や粘液の分泌、消化管運動などに関わる。腸クロム親和性細胞の異常なセロトニン放出は下痢の原因となる。*7
ブドウ球菌による食中毒の特徴的な症状である嘔吐と下痢は、ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンが腸クロム親和性細胞からのセロトニン分泌を誘発することによって起こるとされる。*8
セロトニンの分泌を増加させる †
反復的なリズム運動がセロトニンの増加に関与しているという研究結果が報告されている。
坐禅の呼吸法、読経、ヨガ、太極拳、ウオーキング、自転車こぎ、スクワット、ガム噛みなど、セロトニン神経を賦活させるリズム運動において、その前後で全血セロトニン濃度を比較したところ、それらすべてのリズム運動において有意に増加する結果を得た。*9
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンを材料として作られる。トリプトファンは植物性タンパク質にはあまり含まれてないので、動物性タンパク質を摂取しないとセロトニンが補えない。*10
また、セロトニンの合成には光を浴びる事が必要。
セロトニンが過剰になるとセロトニン症候群となる。また、セロトニンを増やす抗うつ薬の副作用として勃起不全がある。*11
*2幸せホルモン「セロトニン」|東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部: https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column/column20141027.html
*3技術評論社 石浦章一 タンパク質はすごい! 心と体の健康を作るタンパク質の秘密(2014/1/5)
*4夏目漱石の坊っちゃんのように、間違った事が大嫌いで義憤に駆られ、損ばかりする行動様式に脳内セロトニンが関与 京都大学: http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2011/120228_1.htm
*5痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief ー伝達物質: http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/subs-transm.html#serotonin
*6運動によるセロトニンシステムの活性化が不安を軽減する | 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター: http://www.kio.ac.jp/nrc/pressrelease2
*7ラット遠位結腸における、セロトニンを含有する腸クロム親和細胞の形態: https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180403134405.pdf?id=ART0009884543
*8国立感染症研究所 ブドウ球菌食中毒とは: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/511-aureus.html
*9東邦大学医学部医学科統合生理学教授 有田秀穂 リズム運動がセロトニン神経系を活性化させる: http://www.serotonin-dojo.jp/article03.html
*10痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief ー伝達物質
*11東北大学大学院生命科学研究科 交尾をしない“プラトニック変異体”はセロトニンが足りない ショウジョウバエでの研究成果: https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20161212_02web.pdf
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