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HEALTH WORDS / 用語解説

可溶性エポキシヒドロラーゼ

soluble epoxide hydrolase

可溶性エポキシヒドロラーゼとは、主にエポキシドをジヒドロキシ誘導体であるジヒドロ体に変換する代謝酵素の一つである。1

この酵素は、生体内において重要な生理活性を持つ脂質メディエーターであるエポキシエイコサトリエン酸 (EETs) を分解し、不活性化させる主要な経路を担っている。1

EETsには血管拡張作用や抗炎症作用、臓器保護作用などがあることが知られている。1

そのため、可溶性エポキシヒドロラーゼの働きを阻害することによってEETsの生体内濃度を高め、心血管疾患や炎症性疾患などの病態を改善させる試みがなされている。1

可溶性エポキシヒドロラーゼはEPHX2遺伝子によってコードされており、ヒトを含む哺乳類の様々な組織において発現が確認されている。2

特に肝臓や腎臓などの代謝および排泄に関わる臓器で高い発現量を示すほか、血管の内皮細胞や平滑筋細胞、さらには脳や心臓といった循環器系や中枢神経系の組織においてもその存在が認められている。2

分子構造の観点から見ると、可溶性エポキシヒドロラーゼは二つの異なるドメインを持つホモ二量体として機能する特徴がある。3

C末端側にはエポキシヒドロラーゼとしての触媒ドメインが存在し、基質となる多様なエポキシド化合物の開環反応を直接触媒する。3

一方で、N末端側にはホスファターゼ活性ドメインが備わっており、リン酸化された脂質分子の代謝に関与していることが示されているが、その生理的意義や詳細な機序については現在も研究が進められている段階にある。3

薬理学的な研究においては、可溶性エポキシヒドロラーゼの選択的阻害薬の開発が精力的に進められてきた。1

酵素活性を抑える低分子化合物を投与することで、体液中のEETsが分解されずに維持され、血圧の降下や炎症反応の抑制、さらには痛みの軽減といった治療的ベネフィットをもたらすことが動物実験などで示されている。1

こうした背景から、可溶性エポキシヒドロラーゼは高血圧、動脈硬化、心不全、糖尿病、さらには神経変性疾患やがんの進展などに関連する創薬の標的分子として非常に大きな注目を集めている。1

また、環境科学や毒性学の分野においても、可溶性エポキシヒドロラーゼは環境汚染物質として知られる芳香族化合物のエポキシド代謝に関与することが知られており、生体防御における解毒機構としての役割も持っている。3

このように、単なる脂質代謝酵素としての側面だけでなく、創薬化学、病態生理学、環境医学など幅広い分野において、可溶性エポキシヒドロラーゼに関する学術的な研究は現在も多角的に展開されている。1

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907021798670877 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
  2. アメリカ国立医学図書館: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2053 ↩1 ↩2
  3. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12691657/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4