HEALTH WORDS / 用語解説
好中球遊走
Neutrophil migration
好中球遊走とは、好中球が血管内から組織へと移動し、化学物質の濃度勾配に沿って生体内の目的地へ向かう現象である。1
好中球は白血球の一種であり、体内に侵入した細菌や真菌などの病原体を貪食・殺菌することによって、自然免疫の中心的な役割を担っている。2
通常の状態では、好中球は血流に乗って全身を循環しているが、感染や組織障害が発生した際には、その局所へと速やかに遊走する必要がある。3
好中球遊走のプロセスは、血管内皮細胞との接着、血管外への遊出、そして組織内での走化性(ケモタキシス)による移動の諸段階を経て行われる。1
組織の炎症部位からは、ケモカインやサイトカイン、補体成分(C5aなど)、細菌由来のペプチドといった様々な化学走化性因子が放出される。3
好中球の表面にはこれらのシグナル物質を認識する特異的な受容体が発現しており、細胞外の濃度勾配を感知することが可能となっている。1
化学物質の受容体が刺激されると、好中球の細胞骨格を構成するアクチンの重合や脱重合が引き起こされ、細胞の前端に偽足(ラメリポディアやフィロポディア)が形成される。1
この偽足の伸展と細胞体の収縮が協調して起こることにより、好中球は基質上をアメーバ運動様に移動して化学物質の発生源へと接近する。1
血管内から組織への遊出においては、まず血管内皮細胞に発現する接着分子と好中球上のインテグリンなどが相互作用し、好中球が内皮細胞の表面を転がるローリング現象が生じる。3
続いて堅固な接着を経て、内皮細胞間隙を通過して組織内へと遊出するトランスミグレーションが完了する。3
このように、好中球遊走は生体防御の最前線において極めて重要な生体反応であるが、過剰あるいは不適切な遊走は自己組織への障害を引き起こし、様々な炎症性疾患や自己免疫疾患の病態形成に関与することが知られている。1
参考文献・出典
- 和歌山医学: https://www.wakayama-med.ac.jp/med/yakuri/wakayama_igaku/63_2/003.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
- 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-058.html ↩
- 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.ndl.go.jp/info:ndl/pid/11624898/www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0902-8i.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4