HEALTH WORDS / 用語解説
血中
Blood concentration / In blood
血中とは、生体の血液循環系内、すなわち血管(動脈、静脈、毛細血管など)の内部を流れる血液の液体成分あるいは全血の中における、特定の物質の存在状態やその濃度を指す医学・生物学上の一般的な用語である。1
生体内における物質の動態を評価する上で、血中の状態を把握することは極めて重要である。経口投与や静脈注射などによって投与された薬剤(医薬品)は、吸収の過程を経て血流に乗ることで全身へと移行する。血中における薬物濃度の変動、すなわち血中濃度の時間的推移を解析することは、薬物動態学(ファーマコキネティクス)の基本であり、有効性と安全性を担保するための投与量設計や投与間隔の決定に不可欠な指標となる。2
また、臨床医学および検査医学の領域において、血中からの成分分析は疾病の診断、病態把握、予後予測を行うための主流な手段となっている。血液中には、生体の代謝活動によって産生される様々なホルモン、酵素、電解質、栄養素、さらには臓器障害に伴って漏出するタンパク質や代謝産物が存在している。これらを血中濃度として測定・評価することにより、肝機能、腎機能、内分泌機能をはじめとする生体の恒常性(ホメオスタシス)の破綻を検知することが可能となる。3
さらに、薬物治療の領域では薬物治療モニタリング(TDM)という手法が広く用いられている。これは、治療域が狭く副作用の発現リスクが高い抗菌薬や抗てんかん薬、免疫抑制剤などの血中濃度を測定し、その結果に基づいて個々の患者に応じた投与設計を行うものである。血中での動態をモニタリングすることにより、中毒域への到達を防ぎつつ、十分な治療効果が得られる濃度を維持することが可能となる。4
このように、血中という概念は、基礎医学における薬理学的な代謝研究から、臨床検査における生化学的診断に至るまで、生命科学のあらゆる側面において中心的な役割を担っている。
参考文献・出典
- 国立国語辞典: https://kotobank.jp/word/%E8%A1%80%E4%B8%AD-530971 ↩
- 医薬品医療機器総合機構 審査管理部: https://www.pmda.go.jp/files/000159496.pdf ↩
- 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-079.html ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/ICHS/ich-guidelines/quality/q8/q8r2_step4_j.pdf ↩