HEALTH WORDS / 用語解説
治療抵抗性
Refractory / Treatment-resistant
治療抵抗性とは、標準的な治療法や薬物療法を実施しても十分な臨床的効果が得られず、疾患の症状が改善しない状態を指す。1 悪性腫瘍や精神疾患、感染症などの幅広い臨床領域において用いられる重要な概念である。2
がん領域における治療抵抗性は、化学療法や放射線療法などの標準治療に対して腫瘍が縮小しない、あるいは一時的に改善しても早期に再発する病態を意味する。1 この背景には、がん細胞が持つ遺伝子変異やエピジェネティクス的変化、腫瘍微小環境の多様性が深く関与していることが知られている。1 また、複数種の抗悪性腫瘍剤に対して同時に耐性を示す多剤耐性が獲得されることも、治療抵抗性の主要な要因の一つである。1
精神医学の分野においても、治療抵抗性はうつ病や統合失調症などの精神疾患の予後を左右する重大な課題として扱われる。2 例えば治療抵抗性統合失調症では、複数の抗精神病薬を用いた十分な用量と期間の薬物療法を行っても、幻覚や妄想などの陽性症状や社会的機能の低下が持続する。2 このような病態に対しては、受容体への親和性が異なる別の薬剤への切り替えや、専門的な併用療法、電気痙攣療法などの代替的な治療戦略が検討される。2
感染症の領域では、抗菌薬や抗ウイルス薬に対する耐性菌の出現が治療抵抗性の臨床的問題を引き起こす。3 病原体が獲得した遺伝的変異やバイオフィルムの形成によって薬剤の移行が阻害されると、通常の投与量では殺菌作用や静菌作用が十分に発揮されなくなる。3 これにより感染症の難治化や重症化を招くため、感受性試験に基づいた適切な薬剤選択や感染対策が不可欠となる。3
治療抵抗性のメカニズムの解明は、現代の医学研究および創薬において極めて重要な研究領域である。1 個々の患者のゲノム情報や生体分子プロファイルに基づいたプレシジョン・メディシン(精密医療)の発展により、従来の治療法が効かない原因を特定し、新しい分子標的薬や免疫療法を適用するアプローチが模索されている。2