HEALTH WORDS / 用語解説
薬剤性肝障害
Drug-Induced Liver Injury
薬剤性肝障害とは、内服薬、注射薬、漢方薬、サプリメントなど、治療や健康維持の目的で使用されるさまざまな物質が原因となり、肝臓に機能的あるいは器質的な障害を引き起こす病態の総称である。1
原因となる薬剤は多岐にわたり、日常診療で頻繁に使用される解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗腫瘍薬、中枢神経作用薬などが含まれるほか、アレルギー体質や代謝酵素の遺伝的背景などが発症に関与する場合がある。1
病態の機序としては大きく分けて、薬剤およびその代謝物が直接的に肝細胞を破壊する「中毒性機序」と、免疫学的な機序や代謝酵素の異常などを介して特異体質的に引き起こされる「特異体質性機序」が存在する。1
臨床的な病型分類としては、血中のASTやALTといった肝逸脱酵素の上昇を特徴とする肝細胞障害型、ALPやビリルビンの上昇が主体となる胆汁うっ滞型、およびその双方が混在する混合型に分類される。1
多くの場合は無症状であるが、倦怠感、食欲不振、悪心、黄疸、褐色尿などの症状が現れることがあり、劇症肝炎へと進行して生命に関わる重篤な転帰をとる症例も存在するため早期の発見が極めて重要である。1
診断においては、詳細な服薬歴の聴取が最も不可欠であり、肝障害を引き起こしうる他の疾患(ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、胆道疾患など)を除外することが求められる。1
また、原因と疑われる薬剤の投与を中止した後に肝機能検査値が改善するかどうかを確認することも診断の重要な要素であり、臨床現場では因果関係を評価するための各種評価スコアが補助的に用いられる。2
治療の基本は、原因となっている薬剤の速やかな投与中止であり、多くの軽症例では中止のみで肝機能は自然に回復に向かう。2
ただし、重症の肝障害や劇症肝炎が疑われる場合には、副腎皮質ステロイド薬の投与や血漿交換などの集学的治療が必要となることがあり、場合によっては肝移植が考慮されることもある。1