HEALTH WORDS / 用語解説
血行性
hematogenous
血行性とは、病原体や細胞などが血液の流れ(血行)に乗って身体の他の部位へ運ばれる状態や経路を指す医学・生物学用語である。1
感染症の領域において、血行性とは身体の特定の局所で繁殖した細菌やウイルスなどの病原体が血管内に侵入し、血流を介して全身の臓器や組織に運ばれ、新たな感染巣を形成する経路を意味することが多い。1
例えば、感染性心内膜炎や敗血症といった疾患の病態形成や、感染症が血液を介して脳や肝臓、腎臓などの遠隔臓器に波及する過程において、この血行性の播種が重要な役割を果たしている。2
また、腫瘍学の分野においても血行性は極めて重要な概念であり、悪性腫瘍(がん)の転移経路の一つとして広く認知されている。3
がんの細胞が原発巣から周囲の組織や血管の壁に浸潤し、特に毛細血管や静脈などの血管内へ入り込むことによって、血流に乗って循環する状態が引き起こされる。3
血管内に入り込んだがん細胞は、血流の物理的な圧力や免疫系細胞の攻撃を受けながらも、遠隔地の毛細血管の細い網目で捕捉されることがある。3
そこで血管の内皮細胞を通り抜けて周囲の実質器官へと定着し、増殖を再開することで転移巣を形成する機構が、血行性転移の基本的なプロセスである。3
人体の解剖学的および生理学的な特徴として、静脈血は全身から心臓を経て肺へと送られるため、肺は血行性転移や血行性感染の好発部位の一つとなりやすい。1
一方で、消化器系からの静脈血は門脈を介して一度肝臓を通るため、腹部の臓器に生じた病変からの血行性の波及は肝臓に起こりやすいという特徴がある。1
このように、血行性という言葉は病気の広がり方や転移のメカニズムを理解する上で、臨床医学および病理学の両面において基本かつ重要な概念として用いられている。2