HEALTH WORDS / 用語解説
転移性肺腫瘍
Metastatic pulmonary tumor
転移性肺腫瘍とは、身体の他の原発巣に発生した悪性腫瘍(がん)が、血行性あるいはリンパ行性に肺へ転移して増殖した腫瘍の総称である。1 呼吸器外科領域において頻度の高い疾患の一つであり、肺は全身の血流が集中する臓器構造上の特性から、転移を最も起こしやすい臓器の一つとして知られている。2
転移性肺腫瘍の原発巣となる悪性腫瘍は多岐にわたり、大腸がん、胃がんなどの消化器がんをはじめ、乳がん、腎細胞がん、子宮がん、卵巣がん、骨肉腫や軟部腫瘍などの肉腫に至るまで、ほぼ全身の悪性腫瘍から肺転移を来す可能性がある。1 がん細胞が原発巣から剥がれ落ちて血管やリンパ管に入り込み、血流に乗って肺血管床に到達した後、血管内皮を通過して肺実質へ定着し、新生血管を誘導しながら増殖することによって腫瘍が形成される。2
臨床症状としては、初期段階では自覚症状が全くないことが多く、健康診断や胸部X線検査、CT検査などの画像診断によって偶然発見されるケースが少なくない。1 病変が進行して腫瘍が大きくなったり、気管支や胸膜へ影響を及ぼしたりすると、咳嗽(せき)、痰、血痰、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状が現れることがある。2 また、多発する肺転移や呼吸機能の低下に伴い、全身の倦怠感や体重減少といった全身症状を伴う場合もある。1
診断においては、詳細な病歴聴取や原発巣の検索に加え、胸部CT検査によって腫瘍の数、大きさ、分布などを評価することが極めて重要である。2 転移性肺腫瘍は多発性に出現することが多いが、単発性の場合もあり、原発性肺がんや良性腫瘍との鑑別が困難なこともあるため、気管支鏡検査やCTガイド下肺生検、あるいは外科的切除による病理組織学的検査が行われることがある。1
治療方針の決定にあたっては、原発巣の制御状態、肺転移巣の数や局在、全身状態(パフォーマンスステータス)、および組織型や感受性などが総合的に考慮される。2 原発巣が完全にコントロールされており、転移が肺にとどまっているか、あるいは切除可能な範囲である場合には、外科療法として肺切除術(部分切除、区域切除、肺葉切除など)が選択肢となり、良好な予後が期待できる場合がある。1 一方で、病変が多発している場合や肺外転移を伴う場合、あるいは手術が困難な組織型である場合には、薬物療法(化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)や放射線治療などの集学的治療が行われる。2