HEALTH WORDS / 用語解説
難消化性
Indigestibility / Indigestible
難消化性とは、ヒトの消化酵素によって分解されにくく、小腸で消化・吸収されずに大腸へと到達する性質のことである。1
医学および栄養学の分野において、この性質を持つ代表的な成分として食物繊維や難消化性デキストリンなどの多糖類、レジスタントスターチ(難消化性デンプン)などが挙げられる。1
従来の栄養生理学においては、小腸で吸収されない成分は栄養素としての価値が低いとみなされていたが、近年の研究により、宿主の健康維持において極めて重要な役割を果たしていることが明らかにされている。1
小腸を通過して大腸に達した難消化性成分は、腸内細菌(善玉菌など)の発酵・分解を受ける。1
この代謝の過程で短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)が産生され、大腸粘膜の上皮細胞のエネルギー源として利用されるほか、腸内環境を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑制する効果が示されている。1
また、難消化性の性質を持つ物質は、水分を保持して便の容積を増加させる作用や、腸管内での糖質や脂質の吸収速度を緩やかにする作用を持つ。1
これにより、食後血糖値の急激な上昇の抑制や、血中コレステロール値の改善など、様々な生活習慣病の予防および改善に寄与することが知られている。1
さらに、食品工業の分野においても、難消化性の特性を利用した機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)の開発が広く行われており、血糖値や中性脂肪が気になる人々向けの製品に多く応用されている。2
このように、難消化性は単に消化されないという物理化学的な特性にとどまらず、腸内フローラを介した宿主の全身の代謝機能や免疫系に深く関与する重要な生体防御的・生理学的特性として位置づけられている。1