HEALTH WORDS / 用語解説
EML4-ALK
EML4-ALK
EML4-ALKとは、 echinoderm microtubule-associated protein-like 4 (EML4) 遺伝子と anaplastic lymphoma kinase (ALK) 遺伝子の染色体異常|染色体逆位や転座によって形成される融合遺伝子、およびそれがコードする融合タンパク質のことである。1
EML4-ALK融合遺伝子は、ヒトの非小細胞肺癌、特に腺癌のサブタイプにおいて重要なドライバー遺伝子変異の一つとして知られている。1
この遺伝子異常は、第2染色体短腕(2p21および2p23)上の領域で生じる小さな逆位により、EML4遺伝子のN末端側とALK遺伝子のキナーゼドメインを含むC末端側が結合することによって引き起こされる。2
EML4-ALK融合タンパク質は、細胞内でチロシンキナーゼとしての活性が常に持続する恒常的な活性化状態を示す特徴がある。2
この持続的なキナーゼ活性は、下流の細胞増殖や生存に関わるシグナル伝達経路(MAPK経路、PI3K-AKT経路、JAK-STAT経路など)を異常に活性化させ、腫瘍の発生および増殖を駆動する中心的な役割を果たす。3
EML4-ALK陽性の非小細胞肺癌は、臨床的に特定の患者群を形成しており、一般的に喫煙歴がないか軽度である若い患者に多く見られる傾向があるが、喫煙者にも発症することはある。3
この分子異常を持つ癌に対しては、ALK阻害薬と呼ばれる分子標的薬(クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ロルラチニブなど)が極めて高い治療効果を示すことが臨床試験および実際の医療現場で示されている。3
EML4-ALKの検出には、免疫組織化学染色法(IHC法)、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)、およびポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR法)や次世代シーケンシング(NGS)などの遺伝子検査が用いられ、適切な治療薬を選択するためのコンパニオン診断として重要な意義を持っている。3
一方で、ALK阻害薬による治療を継続するうちに、ALK遺伝子の二次的な点変異やバイパスシグナルの活性化などによる薬剤耐性が獲得されることがあり、これが難治化の主な原因となるため、耐性機序に応じた次世代の阻害薬の開発や研究が現在も精力的に進められている。3
参考文献・出典
- NCI Dictionary of Cancer Terms: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/eml4-ALK ↩1 ↩2
- Nature: https://www.nature.com/articles/nature05945 ↩1 ↩2
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK557545/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5