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HEALTH WORDS / 用語解説

MAPキナーゼ経路

MAP kinase pathway

MAPキナーゼ経路とは、細胞外からの様々な物理的刺激や化学的刺激(サイトカイン、ホルモン、ストレスなど)を細胞膜上の受容体を介して細胞内へ伝達し、遺伝子発現や細胞の増殖、分化、アポトーシスなどの多様な生物学的応答を引き起こすシグナル伝達経路の総称である。1

この経路は一般にキナーゼカスケードと呼ばれる多段階のリン酸化反応によって構成されており、上流から順にMAPKKK(MAPKキナーゼキナーゼ)、MAPKK(MAPKキナーゼ)、そして最終的なエフェクターであるMAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)へとリン酸化シグナルが連続的に伝達される仕組みを持っている。2

哺乳類の細胞においては、主にERK経路、JNK経路、p38 MAPキナーゼ経路、ERK5経路という複数のサブ経路が存在することが知られており、それぞれ異なる刺激に応答して特異的な生理作用を制御している。3

例えば、ERK(Extracellular signal-regulated kinase)経路は主として成長因子や血清などのマイトジェン刺激によって活性化され、細胞の増殖や生存、分化を促進する中心的な役割を担っている。3

一方で、JNK(c-Jun N-terminal kinase)経路やp38 MAPキナーゼ経路は、紫外線、放射線、酸化ストレス、炎症性サイトカインといった細胞傷害性ストレスや環境ストレスによって強く活性化されることから、ストレス応答経路とも呼ばれている。3

これら多様なMAPキナーゼ経路を介したシグナル伝達は、細胞質内でのタンパク質のリン酸化のみならず、最終的に核内へと移行して転写因子の活性化やリン酸化を引き起こし、特定の遺伝子の転写を誘導または抑制することで細胞の運命を決定付ける。1

そのため、MAPキナーゼ経路の異常な活性化や機能不全は、がんの細胞増殖、転移、炎症性疾患、神経変性疾患など、数多くのヒト疾患の発症や病態進展に深く関与していることが明らかにされている。2

こうした背景から、MAPキナーゼ経路を構成する各分子やキナーゼの活性を特異的に阻害する低分子化合物や分子標的薬の開発が進められており、がん治療薬をはじめとする様々な医薬品の重要な標的分子となっている。3

参考文献・出典

  1. 厚労省e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-091.html ↩1 ↩2
  2. NIBIOHN 医薬基盤・健康・栄養研究所: https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail.php?no=1782read ↩1 ↩2
  3. 厚生労働省 統合医療に係る情報発信等推進事業: https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/rc.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4