HEALTH WORDS / 用語解説
アスペルギルス・ニガー
Aspergillus niger
アスペルギルス・ニガーとは、自然界に広く分布する不完全菌の一種であり、クロカビの代表的な菌種である。1
本種は土壌や植物の残渣、空気中などに常態として存在しており、極めて多様な環境に適応する能力を持っている。2
形態学的には、分生子柄の先端に球状の小梗を形成し、そこに多数の黒色から濃褐色の分生子を密生させる特徴的な構造を持つ。1
この黒い色素の存在が、「ニガー(黒い)」という学名の由来となっている。1
産業利用の分野において、アスペルギルス・ニガーは非常に重要な微生物の一つとして位置づけられている。3
本種はクエン酸やグルコン酸などの有機酸を大量に生産する能力を有しており、食品工業や製薬業における発酵生産に広く用いられている。3
また、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼをはじめとする多様な加水分解酵素を分泌するため、酵素の工業的生産にも利用されている。3
一方で、アスペルギルス・ニガーは日和見感染症の原因となる病原体としての側面も併せ持っている。2
免疫不全状態にある患者や、呼吸器系に基礎疾患を持つ宿主に対して、真菌症を引き起こすことがある。2
特に外耳道炎の原因菌として分離されることが多く、耳鼻咽喉科領域における真菌性外耳道炎の主要な起因菌としても知られている。2
さらに、一部の株は適切な環境条件下でマイコトキシンの一種であるオクラトキシンAなどを産生することが報告されており、食品衛生学の観点からも汚染管理の対象となることがある。2
このようにアスペルギルス・ニガーは、有用な生物資源としての経済的価値を持つ一方で、医療や衛生管理の領域では厳重な管理が求められる両面性を持った真菌である。3