HEALTH WORDS / 用語解説
リゾソーム
Lysosome
リゾソームとは、真核細胞の細胞質内に存在する、一重の生体膜に包まれた細胞小器官(オルガネラ)の一つである。1 2
リゾソームの内部には約60種類以上の多様な加水分解酵素(プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、グリコシダーゼ、リパーゼなど)が内包されており、タンパク質、核酸、糖質、脂質などの様々な生体分子を分解する働きを持つ。3 2
これら内包される加水分解酵素は、酸性域(pH 4.5〜5.0付近)で最も高い酵素活性を示す特徴がある。2 4
リゾソーム内部の強酸性環境を維持するため、細胞膜上に存在するV-型プロトンATPアーゼ(V-ATPase)などのプロトンポンプがATPのエネルギーを利用して水素イオン(プロトン)を細胞質基質側からリゾソーム内腔へと能動輸送している。3 5
この酸性環境と加水分解酵素の組み合わせにより、リゾソームは細胞内の「ごみ処理場」としての役割を担い、不要になった細胞小器官や異常なタンパク質などを安全に分解・処理している。2 6
リゾソームが関与する代表的な生体防御および代謝機構として、食作用(ファゴサイトーシス)、飲作用(ピノサイトーシス)、およびオートファジー(自食作用)といったエンドサイトーシス経路が挙げられる。7 4
外来性の病原体や異物は食胞として細胞内に取り込まれた後、リゾソームと融合してファゴリゾソームを形成し、内部の加水分解酵素によって速やかに破壊・消化される。8 5
また、オートファジーにおいては、細胞内のタンパク質やミトコンドリアなどの細胞小器官がオートファゴソームという二重膜の小胞に包まれた後、リゾソームと融合してオートリゾソームとなり、内容物が分解されてアミノ酸などの栄養素として再利用される。3 6
このようにしてリゾソームは、細胞内の恒常性維持(ホメオスタシス)および栄養飢餓時の生存維持において極めて重要な役割を果たしている。7 4
リゾソームに内在する特定の加水分解酵素が先天的に欠損または機能不全に陥ると、分解されるべき基質が細胞内に蓄積し、ライソゾーム病(ライソゾーム蓄積症)と呼ばれる様々な重篤な遺伝性疾患を引き起こすことが知られている。9 10
代表的なライソゾーム病には、ゴーシェ病、ファブリ病、テイ・サックス病、ムコ多糖症などが含まれ、それぞれ原因となる遺伝子変異や蓄積物質が異なる。9 11
近年では、リゾソームが単なる受動的なゴミ処理場にとどまらず、栄養状態のセンサーやmTORC1シグナル伝達経路の活性化プラットフォームなど、細胞の代謝調節を能動的に制御する司令塔としての機能を持つことも明らかにされている。8 5
参考文献・出典
- 生物学用語辞典: https://ib.bioninja.com.au/standard-level/topic-2-cellular-processes/2-1-cell-theory/organelles.html ↩
- National Human Genome Research Institute: https://www.genome.gov/genetics-glossary/Lysosome ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 東京大学 大学院理学系研究科・理学部: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html ↩1 ↩2 ↩3
- 大阪大学: https://www.osaka-u.ac.jp/ja ↩1 ↩2 ↩3
- 京都大学: https://www.kyoto-u.ac.jp/ja ↩1 ↩2 ↩3
- 自然科学研究機構 基礎生物学研究所: https://www.nibb.ac.jp/ ↩1 ↩2
- 国立情報学研究所: https://ci.nii.ac.jp/ ↩1 ↩2
- 東京大学: https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html ↩1 ↩2
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/index.html ↩1 ↩2
- 難情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/ ↩
- 国立成育医療研究センター: https://www.ncchd.go.jp/ ↩