HEALTH WORDS / 用語解説
全身性疾患
Systemic disease
全身性疾患とは、特定の臓器や組織にとどまらず、身体全体あるいは複数の器官系に影響を及ぼす疾患の総称である。1
局所的な病変とは異なり、血液やリンパ液の循環、神経系、あるいは免疫系といった広範な生体防御機構や生理機能を介して、全身のさまざまな部位に病態が波及する特徴を持つ。2
代表的な全身性疾患には、糖尿病、高血圧、膠原病、悪性腫瘍の転移などが挙げられる。3
多くの全身性疾患は、単一の遺伝子異常や環境要因だけでなく、複数の遺伝子と環境因子の複雑な相互作用によって引き起こされる多因子疾患であることが多い。4
例えば、糖尿病はインスリンの分泌低下や作用不足により慢性高血糖をきたす代謝性疾患であるが、その長期的な継続は網膜症、腎症、神経障害といった微小血管障害をはじめ、全身の動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳卒中などの重篤な合併症を誘発する。5
また、関節リウマチなどの自己免疫疾患に代表される膠原病では、本来は外敵から生体を守るべき免疫系の異常により自己の組織に対する免疫応答が生じ、関節だけでなく肺、血管、皮膚などの多様な結合組織に炎症を引き起こす。6
循環器系に目を向ければ、動脈硬化症は全身の血管壁にプラークが蓄積する病態であり、心臓、脳、腎臓、下肢などあらゆる臓器の血流障害の基盤となるため、臨床医学においては全身性疾患としての捉え方が不可欠となる。7
さらに、悪性腫瘍における遠隔転移や癌化学療法による全身管理、あるいは重篤な感染症が引き起こす敗血症なども、生体全体に過剰な炎症反応や代謝異常をもたらす全身性疾患の範疇に含まれる。8
診断においては、特定の局所症状の有無だけでなく、血液検査による生化学的指標の変動、画像診断による多臓器の評価、病理組織学的検査などを総合的に行い、全身の状態を把握することが求められる。9
治療においても、局所の対症療法のみならず、薬物療法や生活習慣の修正などを通じて全身の代謝や免疫、循環動態をコントロールし、生命予後の改善および生活の質(QOL)の維持を図ることが極めて重要である。10
参考文献・出典
- MSDマニュアル プロフェッショナル版: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル ↩
- 南山堂 医学大辞典: https://www.nanzando.com/ ↩
- 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/ ↩
- 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ ↩
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター: https://dmic.ncgm.go.jp/ ↩
- 難病情報センター: https://www.難病情報センター.jp/ ↩
- 日本循環器学会: https://www.j-circ.or.jp/ ↩
- 国立がん研究センター: https://www.ganjoho.jp/ ↩
- 日本医学会: https://jams.med.or.jp/ ↩
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/ ↩