ホーム慢性GVHD

HEALTH WORDS / 用語解説

慢性GVHD

Chronic Graft-versus-Host Disease

慢性GVHD(移植片対宿主病)とは、造血幹細胞移植後(特に同種移植後)に長期間にわたって持続または遅発性に出現する多系統の免疫学的疾患であり、ドナー由来のT細胞がレシピエント(患者)の組織を自己の組織と誤認して攻撃することによって引き起こされる合併症である。1

造血幹細胞移植後おおむね100日以降、あるいは急性GVHDの経過をたどった後に発症することが多いが、近年では発症日時にかかわらず臨床的な特徴に基づいて急性GVHDと診断基準が明確に区別されている。1

慢性GVHDは皮膚、口腔、眼、肝臓、肺、消化管、筋膜・関節など全身の多様な臓器に障害を及ぼす。2

皮膚症状としては、紅斑や苔癬様皮疹に加え、硬化性病変が出現し、皮膚の突っ張りや関節拘縮を引き起こすことがある。1

口腔内では粘膜の潰瘍や扁平苔癬様病変、唾液腺の障害による著しい口腔乾燥が生じるほか、眼においては涙液分泌の低下によるドライアイや角膜炎が認められる。1

消化管が侵された場合には、食道の狭窄や下痢、吸収不良による体重減少が起こり、肝臓病変では胆汁うっ滞や肝障害を示す血清生化学検査値の異常が観察される。1

呼吸器合併症として閉塞性細気管支炎(BO)を発症することがあり、これは難治性の咳嗽や呼吸困難を伴い生命予後に関わる重要な病態である。1

さらに、免疫不全状態が長期化するため、細菌、ウイルス、真菌などの日和見感染症に対する感受性が著しく亢進する。2

慢性GVHDの発症機序は複雑であり、自己免疫反応様の異常な免疫応答、T細胞やB細胞の免疫寛容の破綻、および線維化を促進するサイトカインの過剰産生が関与していると考えられている。1

診断は、臨床症状の評価に加え、組織学的検査や各臓器の機能検査を総合して行われる。1

治療の基本は副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を用いた免疫抑制療法であるが、効果が不十分な場合やステロイドの副作用が問題となる場合には、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンやタクロリムス)や分子標的薬、免疫抑制剤などの追加・変更が行われる。1

また、各臓器病変に対する対症療法や、感染症予防のための抗菌薬投与などの支持療法も長期的な管理において極めて重要である。2

参考文献・出典

  1. 造血幹細胞移植ガイドライン 慢性移植片対宿主病(cGVHD): https://www.jshct.com/files/file/guideline/05_cGVHD.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス 造血幹細胞移植とGVHD: https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/stem_cell_trans/HSCT_04.html ↩1 ↩2 ↩3