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HEALTH WORDS / 用語解説

抗原賦活化処理

Antigen retrieval

抗原賦活化処理とは、ホルマリンなどの化学物質によって固定された組織標本において、マスクされている抗原と抗体との反応性を回復させるための前処理手法である。1

免疫組織化学(IHC)法や免疫蛍光染色法などの実験手技において、組織の保存や固定の過程でタンパク質間に架橋が形成されると、抗体が結合すべきエピトープ(抗原決定基)が隠されたり立体構造が変化したりして検出感度が著しく低下する。2

このような抗原のマスキング状態を解除し、抗体の結合能を再び高めるために、この抗原賦活化処理が広く用いられている。1

具体的な処理方法としては、大きく分けて熱処理を用いる方法(Heat-Induced Epitope Retrieval: HIER)と、タンパク質分解酵素を用いる方法(Enzyme-Induced Epitope Retrieval: EIER)の2つが存在する。2

熱処理法であるHIERでは、パラフィン包埋組織切片を緩衝液などに浸した状態で、電子レンジ、オートクレーブ、圧力鍋、あるいはウォーターバスなどの加熱機器を用いて高温にさらす。2

この際の緩衝液としては、クエン酸塩緩衝液やトリス塩酸緩衝液などが一般的に選択され、液のpH値も抗原の種類に応じて最適化されることが多い。1

加熱によるエネルギーがタンパク質間の架橋を効率的に切断し、変性した抗原の立体構造を本来の形に近い状態へと再折り畳みさせると考えられている。2

一方、EIERなどの酵素処理法では、トリプシン、ペプシン、プロテイナーゼKなどのタンパク質分解酵素を組織切片に作用させる。2

酵素が標的とするタンパク質のペプチド結合を部分的に加水分解することによってマスキングを解除するが、反応時間が長すぎると組織形態そのものが破壊されるため、温度や時間の厳密な制御が必要となる。2

これらの抗原賦活化処理の導入により、従来のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本を用いた病理診断や医学研究において、従来は検出不可能であった微量なタンパク質や様々な分子マーカーの可視化が飛躍的に可能となった。1

参考文献・出典

  1. Anatomical Science International: https://link.springer.com/article/10.1007/s12565-022-00675-y ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. Journal of Clinical and Diagnostic Research: https://jcdr.net/article_fulltext.asp?id=5803 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6