HEALTH WORDS / 用語解説
生薬学
Pharmacognosy
生薬学とは、天然に存在する植物、動物、鉱物などの生薬を対象とし、その起源、性状、品質評価、薬効、成分などを科学的に研究する薬学および医学の一分野である。1 生薬は古来より世界各地の伝統医学において疾病の治療や予防に用いられてきた歴史を持ち、現代においても医薬品の重要な資源として位置づけられている。2
生薬学の主な研究領域は、生薬の基原となる生物の正確な同定を行う分類学的・形態学的アプローチから、化学的手法を用いて有用な有効成分を単離・構造決定する天然物化学的アプローチまで多岐にわたる。1 例えば、漢方薬や生薬製剤に含まれる成分の品質を担保するため、日本薬局方などの公定書に基づいた試験法の確立や、化学物質の定量分析が行われている。2 これにより、採取地や季節によって変動しやすい天然物の品質を均一に保ち、安全かつ有効な医薬品として供給することが可能となる。1
また、生薬学は新規医薬品の創薬研究においても極めて重要な役割を果たしてきた。2 自然界に存在する多様な二次代謝産物は、合成化学物質では得られない複雑な立体構造やユニークな生理活性を持つことが多く、これらをリード化合物とした新薬の開発が進められている。1 代表的な生薬由来の医薬品としては、アヘンから得られるモルヒネなどのアルカロイドや、マラリア治療薬として開発されたアルテミシニンなどが挙げられ、これらは現代の臨床医学において欠かせない治療薬となっている。2
さらに近年の分子生物学やゲノム科学の進展に伴い、生薬を生産する植物や微生物の生合成遺伝子を解明し、遺伝子組み換え技術や組織培養を用いて有用成分を効率的に生産する研究も盛んに行われている。1 このように生薬学は、伝統的な知識と最先端の科学技術を融合させながら、人類の健康と医療の発展に貢献し続けている学問である。2