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HEALTH WORDS / 用語解説

真核微生物

Eukaryotic microorganisms

真核微生物とは、細胞内に核や細胞小器官を持つ真核生物のうち、微生物として扱われる単細胞生物および一部の多細胞生物の総称である。12

従来、生物の分類においては植物、動物、微生物といった大枠が用いられてきたが、細胞生物学や分子系統学の発展により、真核生物のドメインに属する生物群の多様性が明らかにされてきた。真核微生物は、原核生物である細菌や古細菌とは異なり、膜で囲まれた細胞核を有し、その内部にゲノムとなるDNAが収納されているという特徴を持つ。また、ミトコンドリアなどの細胞小器官を細胞質内に持ち、エネルギー代謝や物質合成などの複雑な生命活動を分業して行っている。34

真核微生物の主な分類群としては、酵母やカビなどの真菌類の一部、アメーバ類やゾウリムシなどの原生動物、および微細藻類などの藻類の一部が含まれる。これらの生物は、自然界において生態系の物質循環に重要な役割を果たしており、有機物の分解者としてだけでなく、一次生産者としても機能している。例えば、海洋生態系や陸水生態系におけるプランクトンとしての真核微生物は、地球規模の炭素循環や酸素の生産に深く関与している。56

医学および生物学の分野において、真核微生物は基礎研究の重要なモデル生物として広く利用されてきた。代表的な例として、出芽酵母(学名: Saccharomyces cerevisiae)があげられる。出芽酵母は、真核生物としての基本的な細胞周期や遺伝情報の転写・翻訳の仕組みがヒトなどの高等生物と共通しているため、分子生物学や細胞生物学の黎明期から遺伝学的な解析に用いられてきた。ゲノムプロジェクトにおいても、真核生物として世界に先駆けて全塩基配列が解読され、細胞の老化やアポトーシス、シグナル伝達経路の解明に大きく貢献している。78

一方で、真核微生物の中には、人間や動植物に対して病原性を示すものも多く存在する。医学寄生虫学や医真菌学の領域では、マラリア原虫(学名: Plasmodium属)などのアピコンプレクサ門に属する原虫や、カンジダ属、アスペルギルス属などの病原真菌が深刻な感染症を引き起こす病原体として研究されている。原虫による感染症であるマラリアは、世界保健機関(WHO)なども重大な公衆衛生上の課題として挙げており、その治療薬やワクチンの開発が続けられている。また、日和見感染症を引き起こす真核微生物は、免疫不全状態の患者や高齢者において致命的な疾患の原因となるため、迅速かつ正確な診断法の確立が求められている。910

産業利用の面でも、真核微生物は非常に高い有用性を持っている。醸造学や発酵工業において、ビール、ワイン、日本酒などのアルコール飲料の製造や、パンの発酵には古くから酵母が利用されてきた。現代のバイオテクノロジーにおいては、遺伝子組換え技術を用いて有用タンパク質や酵素を生産するための宿主細胞としても真核微生物が活用されている。細菌を宿主とした場合とは異なり、糖鎖修飾などの高度な翻訳後修飾を行えるため、医薬品の生産基盤としても重要な位置を占めている。1112

このように、真核微生物は、基礎科学から医学、薬学、農学、環境科学、産業技術に至るまで極めて幅広い領域で研究および応用がなされており、生命科学の発展に欠かせない分類群の一つである。1314

参考文献・出典

  1. 文部科学省 学術用語集 遺伝学編: https://jsps.go.jp/i-jisedai/index.html ↩
  2. 生物科学学会連合 ライフサイエンス辞書: https://lsd-project.jp/ ↩
  3. 国立科学博物館 植物研究部: https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/ ↩
  4. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/ ↩
  5. 国立環境研究所 環境展望台: https://tenbou.nies.go.jp/ ↩
  6. 海洋研究開発機構: https://www.jamstec.go.jp/ ↩
  7. 理化学研究所 バイオリソース研究センター: https://www.brc.riken.jp/ ↩
  8. 大阪大学 蛋白質研究所: https://www.protein.osaka-u.ac.jp/ ↩
  9. 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/ ↩
  10. 厚生労働省 結核・感染症情報: https://www.mhlw.go.jp/ ↩
  11. 農研機構 農業食品産業技術総合研究機構: https://www.naro.go.jp/ ↩
  12. 経済産業省 生物産業課: https://www.meti.go.jp/ ↩
  13. 日本学術会議: https://www.scj.go.jp/ ↩
  14. 日本生化学会: https://jbs.biochemistry.jp/ ↩