HEALTH WORDS / 用語解説
非神経型ゴーシェ病
Non-neuropathic Gaucher disease
非神経型ゴーシェ病とは、常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患であり、ライソゾーム病の一つに分類されるゴーシェ病の病型のうち、原則として中枢神経系の原発性症状を伴わないものを指す。1
本疾患は、グルコシルセラミダーゼ(別名酸性β-グルコシダーゼまたはグルコセレブロシダーゼ)と呼ばれる酵素の遺伝子変異による機能不全を原因とする。1
この酵素の活性が低下または欠損することにより、その基質であるグルコシルセラミド(グルコセレブロシド)などの糖脂質が分解されずに、マクロファージ系の細胞内に蓄積する。1
糖脂質を呑み込んで肥大化した細胞はゴーシェ細胞と呼ばれ、これが肝臓、脾臓、骨髄などの網内系細胞に多量に蓄積することによって様々な臨床的症状を引き起こす。1
ゴーシェ病は臨床的な特徴から通常3つの型に分類され、その中で非神経型はI型ゴーシェ病とも称される。1
I型は神経学的症状を呈さない点を特徴とするが、発症の時期や症状の重症度には非常に大きな幅が存在し、小児期から高齢期に至るまで幅広い年齢層で診断されることがある。2
主要な身体的症状としては、肝臓と脾臓の著しい腫大(肝脾腫)が挙げられ、これにより腹部の膨満感や不快感が生じることが多い。1
また、骨髄におけるゴーシェ細胞の蓄積は、造血機能に影響を及ぼし、貧血、白血球減少症、血小板減少症といった血液の異常を引き起こす。1
血小板減少症や凝固異常に起因して、鼻血や歯肉出血、皮下出血などの出血傾向が認められることも少なくない。1
さらに、骨組織への影響も顕著であり、骨痛、骨折、骨壊死、骨粗鬆症、さらには大腿骨頭の変形など、多様な骨病変が患者のQOL(生活の質)を低下させる要因となる。2
小児患者においては、成長障害や思春期遅発が見られる場合もある。2
診断にあたっては、患者の末梢血球数測定、肝脾腫の画像検査、および骨髄穿刺や末梢血単核球を用いた酸性β-グルコシダーゼの酵素活性測定が行われる。1
確実な診断や保因者診断、将来的な遺伝カウンセリングのために、原因遺伝子であるGBA1遺伝子の遺伝子検査(DNA解析)が有用である。2
治療法としては、不足している酵素を外部から定期的に投与する酵素補充療法(ERT)が確立されており、肝脾腫の縮小、血液学的異常の改善、骨症状の軽減に対して非常に高い有効性を示す。1
また、酵素補充療法の代替あるいは補助的な治療選択肢として、グルコシルセラミドの合成を抑制する基質合成抑制療法(SRT)に用いられる経口薬も臨床で利用されている。1
対症治療として、疼痛管理のための鎮痛薬投与や、骨折・骨壊死に対する整形外科的手術、重度な脾機能亢進症に対する脾摘出術が検討される場合もあるが、近年は酵素補充療法の普及により脾摘が行われる機会は減少している。2