HEALTH WORDS / 用語解説
MPO
Myeloperoxidase
MPOとは、日本語でミエロペルオキシダーゼと呼ばれる、主に好中球や単球などの造血細胞に豊富に含まれるヘム含有酵素である。1 MPOは免疫系において重要な役割を果たしており、体内に侵入した細菌や真菌などの病原体をファゴサイトーシス(貪食)した際に、過酸化水素とハロゲン化物から強力な活性酸素種である次亜塩素酸を生成することで、生体防御における殺菌作用を発揮する。2
生化学的および分子生物学的観点から見ると、MPOはリソソームのアズール顆粒内に存在し、その遺伝子はヒトの染色体17番長腕(17q23.1)に位置している。3 MPOの活性異常や遺伝子変異は、様々な疾患の病態形成に関与していることが知られている。 例えば、MPOの遺伝的欠損症であるミエロペルオキシダーゼ欠損症では、好中球の殺菌能の一部が低下するものの、多くの場合無症状であるか、糖尿病患者などにおいて真菌感染症のリスクがわずかに増加する程度とされている。
一方で、MPOは炎症反応における酸化ストレスの主要なバイオマーカーとしても臨床的に重視されている。 動脈硬化症の病巣においては、マクロファージから放出されたMPOが低密度リポ蛋白(LDL)を酸化低密度リポ蛋白へと変化させ、プラークの形成や血管の内皮機能障害を促進することが明らかにされている。4 そのため、血中や尿中のMPO濃度測定は、冠動脈疾患や心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスク評価や予後予測において、有用な臨床検査項目の一つとして研究および応用が進められている。5
さらに、自己免疫疾患である抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎においては、MPO自身が主要な自己抗原(MPO-ANCA)として作用する。6 MPOに対する自己抗体が産生されることで好中球が異常に活性化され、全身の毛細血管や小血管に壊死性の炎症を引き起こし、急速進行性糸球体腎炎や肺出血などの重篤な臨床症状を呈することが知られている。7
参考文献・出典
- 厚生労働省e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ye-049.html ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/ICPS/Lasso/jicps-data/ja/search/detail/ch_017.html ↩
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構: https://www.nite.go.jp/NITEJ/search/detail/ja/ch_017.html ↩
- 国立循環器病研究センター: https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/consultation/cardiovascular/ ↩
- 国立保健医療科学院: https://www.niph.go.jp/soshiki/gijutsu/index.html ↩
- 難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/225 ↩
- 厚生労働省指定難病情報: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokken_iryou/iryou/nanbyou/index.html ↩