HEALTH WORDS / 用語解説
ブレビバクテリウム・リネンス
Brevibacterium linens
ブレビバクテリウム・リネンスとは、放線菌門ブレビバクテリウム科に属する好気性のグラム陽性桿菌である1。本菌は自然界の土壌や皮膚常在菌として広く分布しているほか、ウォッシュタイプのチーズの熟成において極めて重要な役割を果たす細菌として知られている1。
ブレビバクテリウム・リネンスは、かつてBacterium linensなどと分類されていたが、1953年にBreedによってBrevibacterium属へと再分類された歴史を持つ微生物である2。形態学的には、若い培養初期においては多形性を示す短桿菌あるいは球桿菌状であるが、生育が進むにつれてV字型や柵状といった特徴的な配列をとる性質がある2。また、運動性はなく、芽胞を形成しない非抗酸性の菌である2。
生理学的特徴として、ブレビバクテリウム・リネンスは好気性でありカタラーゼ陽性を示す種である2。また、本菌は耐塩性が非常に高いという際立った特徴を有しており、高濃度の塩化ナトリウムが存在する環境下でも増殖することが可能である1。この生理的性質が、塩水で洗われながら熟成されるウォッシュタイプのチーズ表面での優占種となるための重要な適応戦略となっている1。
チーズの熟成における役割において、ブレビバクテリウム・リネンスはリネンス菌とも称され、ミュンスターやマンステール、リムバーガーなどのウォッシュチーズの表面に生育して特有の赤橙色の色素(カロテノイド系色素)を産生する1。さらに、本菌は強力なタンパク質分解酵素や脂肪分解酵素を分泌し、チーズのタンパク質や脂質を分解することによって、独特の深い風味や香り、そして柔らかい組織を作り出す発酵の主役として機能している1。
ヒトの健康および皮膚科学の分野においても、ブレビバクテリウム・リネンスはヒトの皮膚常在菌叢の一部として研究対象となっている3。特に、本菌は人間の足の裏などの皮膚において皮脂や角質を代謝する過程で、揮発性有機化合物であるメタンチオールやその他の硫黄化合物などを産生することが知られており、これが足の臭いの発生源の一つに関与していることが科学的に明らかにされている3。このように、ブレビバクテリウム・リネンスは食品科学における発酵微生物としての有益な側面と、人体微生物学における体臭の原因菌としての側面の双方を併せ持つ生物である13。
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201007021021464303 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907085732161745 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201107008137397755 ↩1 ↩2 ↩3