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HEALTH WORDS / 用語解説

低栄養

Malnutrition

低栄養とは、身体の維持、成長、代謝に必要な栄養素およびエネルギーが不足、過剰、あるいは不均衡な状態を指し、医学的および公衆衛生学的に重要な病態である1。狭義にはエネルギーやタンパク質の摂取量が生理学的な需要を下回る状態(低栄養状態:Protein-Energy Malnutrition: PEM)を指すことが多く、飢餓状態や消耗性疾患に伴って生じる生体の危機的病態の一つとして扱われる2。

低栄養は、食事からの栄養素摂取量が身体の需要を満たさないことに起因する原発性低栄養と、基礎にある疾患や病態の影響で栄養素の消化、吸収、代謝、排泄に異常をきたす続発性低栄養(疾病関連低栄養)に大別される。特に臨床現場においては、悪性腫瘍、慢性腎臓病、心不全、慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患や、外科手術後、感染症などの侵襲が加わった際に、炎症サイトカインの産生などを背景として代謝異常を引き起こし、筋肉量や脂肪組織が進行性に失われる病態が問題視される3。

低栄養が進行すると、骨格筋の萎縮および筋力低下が生じ、サルコペニアやフレイルの直接的な原因となる。免疫機能の低下に伴って日和見感染症を含む感染症の合併症リスクが著しく上昇し、創傷治癒遅延や褥瘡の発生・難治化を招く。呼吸筋や心筋の機能不全を来すこともあり、全身の臓器機能が破綻する多臓器不全へと進展する危険性がある。高齢者の場合、低栄養による身体機能や認知機能の低下が要介護状態への移行や死亡率の上昇を直接的に引き起こすため、早期のスクリーニングと適切な栄養管理が極めて重要となる1。

臨床的な診断および評価においては、身長と体重から算出される体格指数(BMI)の低下、血清アルブミン値やトランスフェリン値をはじめとする栄養評価のための血液検査データ、上腕囲や上腕三頭筋皮下脂肪厚などの体格測定値、さらには体重減少の既往などが総合的に用いられる。しかし、血清アルブミンは炎症反応や肝機能の影響を強く受けるため、単一の指標のみで低栄養を判定することは困難であり、国際的な合意基準(GLIM基準など)に基づき、表現型(Phenotypic criteria:体重減少、低BMI、筋肉量減少)と病因型(Etiologic criteria:食物摂取量低下、疾病負担・炎症)を組み合わせて診断する手法が推奨されている3。

低栄養の治療および管理にあたっては、基礎にある疾患の治療を最優先しつつ、患者の病態や消化管機能に応じた栄養療法が選択される。経口摂取が可能な場合には、栄養補助食品を用いた食事療法や高エネルギー・高タンパク質食の提供が行われる。経口摂取が困難であっても消化管の機能が保たれている場合には、経管栄養法(経鼻胃管や胃ろうを用いた栄養補給)が選択される。一方、消化管の機能低下や閉塞などにより経腸栄養が不可能な症例においては、中心静脈栄養などの静脈栄養が施行されるが、いずれの方法においても、栄養補給の再開時に急激な代謝変動をきたすリフィーディング症候群に十分な警戒が必要とされる2。

参考文献・出典

  1. 厚生労働省e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-066.html ↩1 ↩2
  2. 国立国際医療研究センター病院: https://www.ncgm.go.jp/iryou/iryou_syoku/teieiyou.html ↩1 ↩2
  3. 日本静脈経腸栄養学会: https://www.jspen.or.jp/assets/files/gl/19_guideline_03.pdf ↩1 ↩2