HEALTH WORDS / 用語解説
分子遺伝学的検査
Molecular genetic testing
分子遺伝学的検査とは、ヒトのDNAやRNAを直接解析することによって、遺伝子、染色体、あるいはゲノムの変化を検出する臨床検査の一種である。1 この検査は、単一遺伝子疾患の診断や遺伝性疾患の保因者診断、さらには将来的な発症リスクの予測などを目的として広く行われている。2
分子遺伝学的検査の対象となる生体試料には、末梢血、唾液、口腔粘膜、羊水、絨毛など、さまざまな組織や細胞が含まれる。2 採取された試料からDNAやRNAを高純度で抽出し、目的に応じた分子生物学的手法を用いて解析が進められる。1
検査技術の進歩に伴い、用いられる手法も多様化している。 従来からのPCR法やサザンブロット法に加え、特定の塩基配列の異常を効率よく検出するシークエンス解析などが日常臨床に導入されてきた。1 近年では、次世代シークエンサー(NGS)を活用した網羅的ゲノム解析が普及し、多数の遺伝子を同時に解析することが可能となっている。2
分子遺伝学的検査によって検出される変異には、点変異、欠失、挿入、重複などがある。1 これらの遺伝子変異がタンパク質の構造や機能に与える影響を評価することで、疾患の確定診断や病態の把握が行われる。2
また、がん領域においても分子遺伝学的検査の重要性は非常に高い。 腫瘍組織や血液中の循環腫瘍DNAを解析し、特定の体細胞変異や融合遺伝子を同定することで、分子標的薬の適応判定や治療効果の予測、予後の推定が行われる。1 これにより、個々の患者の遺伝子プロファイルに基づいた個別化医療(プレシジョン・メディシン)の実現に大きく貢献している。2
一方で、分子遺伝学的検査の結果は、患者本人だけでなく血縁者にも遺伝的情報としての影響を及ぼすという特異性を持っている。1 そのため、検査の実施にあたっては、専門的な遺伝カウンセリングを通じて、検査の利益や不利益、心理的影響について十分に説明し、本人の自由意思に基づく同意を得ることが不可欠とされる。2