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HEALTH WORDS / 用語解説

脂肪酸代謝

Fatty Acid Metabolism

脂肪酸代謝とは、生物体における脂肪酸の合成、分解(酸化)、および代謝調節に関する一連の生化学的経路の総称である。1 エネルギー産生や細胞膜の構造維持において極めて重要な役割を果たしている。2

脂肪酸の分解経路の中心となるのはβ酸化であり、主としてミトコンドリアまたはペルオキシソームで行われる。3 細胞質に取り込まれた脂肪酸は、アシルCoAシンテターゼによって活性化され、アシルCoAへと変換される。3 長鎖脂肪酸がミトコンドリア内膜を通過するためには、カルニチン依存性のトランスポーターシステムであるカルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ系を介する必要がある。3

ミトコンドリア内に入った脂肪酸アシルCoAは、β酸化回路において脱水素酵素、水和酵素、ケト基脱水素酵素、およびチオラーゼの4段階の酵素反応を繰り返す。3 この分解の過程により、アセチルCoA、NADH、およびFADH2が産生される。3 生成されたアセチルCoAは、クエン酸回路(TCA回路)に流入して完全に酸化され、さらなるエネルギー源となる。3 また、NADHとFADH2は電子伝達系に供給され、ATP(アデノシン三リン酸)の合成に利用される。3

一方、脂肪酸の生合成(脂肪酸合成)は、エネルギーが過剰な状態において肝臓や脂肪組織などの細胞質で進行する。3 合成の初期段階では、アセチルCoAがアセチルCoAカルボキシラーゼによりマロニルCoAへと不可逆的に変換される。3 この反応は脂肪酸合成経路全体における速度律速段階であり、厳密な代謝調節を受けている。3 続いて、多機能酵素である脂肪酸合成酵素(FAS)の触媒作用により、マロニルCoAとアセチルCoAの間で炭素鎖の伸長が繰り返され、主としてパルミチン酸が合成される。3

脂肪酸代謝は、ホルモンや栄養状態の変化によってダイナミックに制御されている。3 インスリンは脂肪酸合成を促進し、同時に脂肪分解(リポリシス)を抑制する働きを持つ。3 対して、グルカゴンやアドレナリンなどのカタボリックホルモンは、ホルモン感受性リパーゼを活性化することで脂肪組織からの脂肪酸遊離を促し、β酸化を亢進させる。3

このように、脂肪酸代謝はエネルギー代謝の恒常性維持に不可欠であり、その破綻は肥満、2型糖尿病、脂質異常症、および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの様々な疾患の発症・進展に深く関与している。3

参考文献・出典

  1. e-Stat 統計で見る日本: https://www.e-stat.go.jp/ ↩
  2. 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/ ↩
  3. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15