HEALTH WORDS / 用語解説
脾臓がん
脾臓がことは、免疫系や血液の濾過を担う脾臓という臓器に発生する悪性腫瘍の一つである。1 脾臓にできる腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、悪性腫瘍の中でも脾臓の組織から直接発生する原発性悪性腫瘍と、他の臓器にできたがんが転移して起こる転移性悪性腫瘍に大別される。2 脾臓に発生する原発性悪性腫瘍は極めて稀な疾患であり、その大部分は悪性リンパ腫や血管肉腫などの肉腫や悪性血管内皮腫といった腫瘍占拠病変として報告されている。1
脾臓がんの発症頻度は非常に低く、臨床現場では全身の他の部位からの転移巣として見つかることや、血液の悪性疾患の一病変として発見されることが多い。3 脾臓は腹部の左上部に位置し、動脈や静脈を介して大量の血液が流入するため、血行性転移をきたしやすい構造を持っている。4 そのため、胃がんや大腸がん、肺がん、乳がんなどの原発巣からがん細胞が血流に乗って脾臓に到達し、転移性脾臓がんを形成する場合がある。1
脾臓がんの初期症状は非特異的であることが多く、自覚症状がないまま健康診断の画像検査などで偶然発見されるケースが少なくない。2 腫瘍が大きくなるにつれて、左上腹部痛や左季肋部痛、腹部膨満感、あるいは脾臓全体の肥大である脾腫に伴う周囲の臓器への圧迫感が生じるようになる。1 また、脾臓は赤血球や血小板などの血液細胞を破壊・調節する機能を持つため、脾臓がんの進行によって脾機能亢進症を引き起こすことがある。5 これに伴い、末梢血中の赤血球や白血球、血小板が過剰に破壊されることで、貧血、易感染性、出血傾向といった血液検査上の異常や臨床症状が現れる場合がある。5
脾臓がんの診断においては、問診や触診に加えて、画像診断が極めて重要な役割を果たしている。6 腹部超音波検査(エコー検査)や造影CT検査、MRI検査、PET-CT検査などが用いられ、脾臓内部の腫瘍の大きさ、数、形状、周囲のリンパ節や血管への浸潤、さらには他の臓器への転移の有無を詳細に評価する。6 しかし、画像検査だけで原発性の悪性腫瘍と転移性腫瘍や良性腫瘍(血管腫や嚢胞など)を完全に鑑別することが困難な場合も多い。3 確定診断を得るためには、生検によって組織を採取することが考慮されるが、脾臓は血流が非常に豊富な臓器であるため、生検手技に伴う出血のリスクが高いという特徴がある。2 そのため、診断と治療を兼ねて外科手術的に脾臓を摘出する脾臓摘出術(脾摘)が選択されることが多い。2
脾臓がんの治療法は、腫瘍の組織型、病期(ステージ)、患者の全身状態や合併症の有無を総合的に判断して決定される。1 原発性悪性腫瘍であり病変が脾臓の内部にとどまっている場合には、根治治療として脾臓摘出術が第一選択となる。2 手術に際しては、腹腔鏡手術あるいは開腹手術が行われ、脾臓だけでなく周囲のリンパ節の郭清が行われることもある。2 一方、悪性リンパ腫が脾臓に病変を形成している場合や、他の臓器からの転移性脾臓がんである場合には、脾臓摘出単独ではなく、化学療法(抗悪性腫瘍薬を用いた薬物療法)や放射線療法などの集学的治療が中心となる。7
脾臓を摘出すると、体内の免疫機能、特に莢膜を持つ細菌(肺炎球菌や髄膜炎菌など)に対する免疫力が低下するため、重症感染症(脾摘後重症感染症: OPSI)
参考文献・出典
- 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/public/cancer/splenic_cancer/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 日本消化器外科学会: https://www.jsgs.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=325 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
- 日本病理学会: https://jsp.psj.or.jp/archives/journal/59_2/jjps_59_2_123.html ↩1 ↩2
- 解剖学ウェブ: https://www.Anatomy-Web.jp/splen/vascular.html ↩
- 日本血液学会: https://www.jshem.or.jp/hematooncology/splenomegaly.html ↩1 ↩2
- 日本医学放射線学会: https://www.radiology.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=45 ↩1 ↩2
- 日本血液学会: https://www.jshem.or.jp/hematooncology/lymphoma.html ↩