HEALTH WORDS / 用語解説
静脈栄養合併肝障害
Intestinal failure-associated liver disease
静脈栄養合併肝障害とは、中心静脈栄養(TPN)を長期にわたり受ける患者において高頻度に発症する肝障害の総称であり、腸管不全関連肝障害(IFALD)とも呼ばれる。1
中心静脈栄養は消化管からの栄養摂取が不可能な患者にとって生命維持に不可欠な治療法であるが、長期継続により肝機能障害を合併することが臨床上の大きな問題となっている。2
病態の発症機序は単一ではなく、静脈栄養の構成成分であるアミノ酸組成の偏りや、過剰なカロリー投与による脂肪肝、リピッドエマルジョン(脂肪乳剤)の投与量や組成に起因する影響などが複合的に関与していると考えられている。3
また、腸管からの栄養摂取が行われないことによる腸管の粘膜萎縮や、それに伴う腸管免疫機能の低下、腸内細菌叢の変化(ディスビオシス)が引き金となり、腸管バリア機能が破綻することが知られている。1
腸管バリア機能の低下によって、腸管内に存在する細菌や内毒素(エンドトキシン)が容易に門脈系へと移行し、これが肝臓に到達することで肝組織において炎症性サイトカインの産生を誘導し、肝細胞の障害や線維化を促進させると指摘されている。2
初期の段階では無症状であることが多いが、臨床検査においてはAST、ALT、ALP、γ-GTPといった肝道系酵素や血清ビリルビン値の上昇として現れ、病態が進行すると胆汁うっ滞や肝線維化、さらには肝硬変や肝不全へと進展する危険性がある。3
小児、特に新生児や低出生体重児においては肝臓の代謝能力や解毒機構が未熟であるため、成人と比較してより短期間で肝障害が重症化しやすい特性があり、細心の注意が必要とされる。1
予防および治療のアプローチとしては、可能な限り経腸栄養を併用または早期に導入し、腸管を刺激することで腸管血流の維持や粘膜の保護を図ることが極めて有効であるとされている。2
静脈栄養管理を行う上では、過剰なブドウ糖や脂質の投与を避け、カロリー管理を適切に行うことや、投与するアミノ酸輸液の組成を工夫することが推奨されている。3
加えて、使用するリピッドエマルジョンの種類を見直し、大豆油由来のものから精製された魚油(オメガ3脂肪酸)を主成分とする製剤へ変更あるいは併用することが、抗炎症作用や肝機能の改善に寄与するという知見も得られている。2
重篤な肝障害や肝不全にまで進展し、保存的治療での改善が困難な難治性の症例においては、最終的な治療選択肢として小腸移植や肝移植といった臓器移植が検討される場合もある。1