HEALTH WORDS / 用語解説
鼻粘膜
Nasal mucosa
鼻粘膜とは、鼻腔の内面を覆う粘膜であり、外気が体内へ侵入する際の最初の防御壁として機能する組織である。1 鼻粘膜は構造的および機能的に呼吸部と嗅覚部に大別され、それぞれ異なる生理学的役割を担っている。2 鼻腔の大部分を占める呼吸部の粘膜は、多列線毛上皮によって覆われており、吸気に含まれる微小な異物や塵埃を捕捉して体外へ排除する粘液線毛クリアランスシステムを形成している。3 上皮細胞の間には杯細胞が点在しており、粘液を分泌することによって鼻粘膜の表面を常に湿潤な状態に保っている。2
鼻粘膜の固有層には豊富な毛細血管および血管網、特に静脈洞(海綿状血管叢)が発達しており、これが吸気の加温および加湿において重要な役割を果たしている。1 冷たく乾燥した外気が鼻腔を通過する際、鼻粘膜の豊かな血流によって熱と水水分が効率的に供給され、肺へと送り込まれる空気の温度と湿度が適切に調整される。1 また、自律神経系による血管の収縮および拡張の制御を受けることで、鼻腔の気道抵抗や鼻閉の状態がダイナミックに調節されている。3
一方、鼻腔の天井付近に位置する嗅覚部の鼻粘膜には、嗅細胞をはじめとする神経系の構成要素が存在している。2 嗅細胞の突起である嗅毛には嗅受容体が発現しており、空気中に漂う化学物質(匂い分子)を特異的に感知して電気信号へと変換する。2 生成された電気信号は嗅神経を介して中枢神経系へ伝達され、脳において匂いとして知覚される仕組みになっている。2
さらに、鼻粘膜は全身性の免疫応答および局所的な生体防御の最前線としても機能している。3 粘膜免疫システムが備わっており、分泌型IgA抗体をはじめとする免疫グロブリンや各種の免疫細胞が病原体の侵入やアレルゲンの結合を水際で阻止する。3 しかし、花粉やハウスダストなどのアレルゲンが過剰に作用すると、マスト細胞からのヒスタミン遊離などを引き金としてアレルギー性鼻炎を発症し、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった炎症症状が引き起こされる。1