HEALTH WORDS / 用語解説
ゲノム編集
Genome editing
ゲノム編集とは、人工ヌクレアーゼを用いてゲノムの特定の位置を意図通りに切断し、DNAの塩基配列を改変する技術の総称である。1
従来からの遺伝子組換え技術が外来の遺伝子を宿主のゲノムのどこかにランダムに挿入する手法であったのに対し、ゲノム編集は標的とする特定の遺伝子配列だけを正確に狙い撃ちして改変できる点に大きな特徴がある。2
ゲノム編集の中心的なツールとなっているのがCRISPR-Cas9システムである。1
このシステムは細菌が持つ免疫機構を応用したものであり、ガイドRNAと呼ばれるRNA分子が標的となるDNAの塩基配列を認識し、Cas9と呼ばれる酵素がその標的部位を正確に切断する仕組みになっている。2
DNAが切断されると、細胞が持つ本来の修復機構である非特異的末端結合や相同組換えを利用して修復が行われる。1
修復の過程で塩基の欠失や挿入が生じることで特定の遺伝子を不活化(ノックアウト)させたり、外来のDNA断片を同時に導入して特定の塩基配列に置換したりすることが可能となる。2
CRISPR-Cas9の他にも、ジンクフィンガーヌクレアーゼやTALENといった人工の制限酵素を用いた手法が開発されており、それぞれの特性に応じて使い分けられている。1
ゲノム編集の応用範囲は非常に広く、基礎生物学における遺伝子機能の解析から、農林水産分野での品種改良、さらには医学分野における遺伝子治療や再生医療に至るまで多岐にわたる。1
農林水産分野では、収量の向上、病気に対する抵抗性の付与、あるいは成分を改良した農作物や水産物の開発が急速に進められている。2
また医学および医療分野においては、原因が遺伝子変異にある遺伝性疾患に対する治療法の開発や、がんなどの難治性疾患に対する新しい治療薬の創出が期待されている。1
一方で、標的以外の意図しないDNA配列が切断・改変されるオフターゲット効果や、生態系への影響、ヒトの胚や受精卵への適用に関する倫理的課題など、社会的な議論や厳格な法的規制の整備が進められている分野でもある。1