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HEALTH WORDS / 用語解説

ピコルナビルス科

Picornaviridae

ピコルナビルス科とは、プラス鎖一本鎖RNAウイルスをゲノムとして持つ、小型でエンベロープを持たない正二十面体のカプシド構造を有するRNAウイルスの分類群(科)の一つである。1

ピコルナビルス科に属するウイルスは、極めて多様な宿主感染性を示し、ヒトをはじめとする哺乳類や鳥類に感染して様々な疾患を引き起こす病原体を含んでいる。2

科の名称は、ラテン語で「小さい」を意味する「pico」と、「RNA」の頭文字に由来しており、ウイルス粒子の直径が約20〜30ナノメートルと非常に小型であるという特徴をよく表している。1

ピコルナビルス科のゲノムサイズはおよそ7,200〜8,500塩基対であり、その5'末端にはウイルスの複製に必須なVPgと呼ばれる小型のタンパク質が共有結合している。1

ゲノムの塩基配列の中央には単一の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)が存在し、宿主の細胞内で翻訳されてからプロテアーゼによって切断されることで、複数種の構造タンパク質と非構造タンパク質が効率的に産生される仕組みを持つ。2

カプシドは、VP1、VP2、VP3、VP4という4種類のキャプソメア(主要構造タンパク質)から構成されており、宿主細胞の表面にある特定の受容体を認識して吸着し、細胞内取り込みまたはゲノムの直接注入によって感染が成立する。1

ピコルナビルス科の中には多くの重要な属が含まれており、代表的なものとしてエンテロウイルス属、ライノウイルス属、ヘパトウイルス属、アフトウイルス属、カルジオウイルス属などが挙げられる。2

エンテロウイルス属には、ポリオウイルスが含まれており、かつて世界中で小児麻痺(ポリオ)の大流行を引き起こし、多くの患者に永続的な麻痺や運動障害を残したことで公衆衛生上極めて重大なウイルスとして知られている。1

また、同属のコクサッキーウイルスやエコーウイルスなどは、無菌性髄膜炎、手足口病、ヘルパンギーナ、心筋炎など、乳幼児を中心に多様な臨床症状を呈する感染症の原因となる。2

ライノウイルス属に分類されるウイルスは、ヒトの上気道に感染して風邪(感冒)の最大の原因病原体となっており、年間を通じて数多くの人々に鼻汁や咽頭痛などの症状を引き起こす。1

ヘパトウイルス属にはA型肝炎ウイルスが属しており、主に経口感染を介して肝臓に到達し、急性肝炎や黄疸などの肝機能障害を発症させるリスクがある。2

さらに、アフトウイルス属に属する口蹄疫ウイルスは、偶蹄類の動物(牛、豚、羊など)に強い感染力を示し、水疱の形成や経済的打撃をもたらす家畜伝染病の原因となるため、獣医学や農業政策の分野において極めて厳重な防疫体制が敷かれている。1

ピコルナビルス科のウイルスに対する治療法としては、多くの種類に対して特異的な抗ウイルス薬が限られているため、対症療法が中心となることが多いが、ポリオウイルスやA型肝炎ウイルスなどではワクチンの接種が予防において極めて高い効果を上げてきた。2

参考文献・出典

  1. 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/411-enterovirus-intro.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
  2. 東京都健康安全研究センター: https://www.tokyo-eiken.go.jp/kansen/flu/entero/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6