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HEALTH WORDS / 用語解説

必須微量元素

Essential trace elements

必須微量元素とは、生体の代謝や生理機能の維持に不可欠でありながら、体内の含有量や必要量が極めて微量である鉱物元素の総称である。1 生物の生存や成長、生殖などの生命活動において重要な役割を担っており、多くは酵素の構成成分となったり、その活性を調節する補因子として働いたりしている。2

生体内における元素の大部分は炭素、水素、窒素、酸素などの主要元素や、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウムなどの主要ミネラルで占められている。1 これに対して必須微量元素は、生体全体に対する重量比が非常に少ないものの、その欠乏は深刻な代謝異常や欠乏症を引き起こす原因となる。2 また、必須微量元素の多くは、通常の食事を通じて適切な量が摂取される必要があるが、過剰に摂取した場合には生体に対して毒性を示すという特徴も併せ持っている。1 そのため、生体内の恒常性を維持するためには、その体内濃度が厳密にコントロールされていなければならない。2

ヒトをはじめとする哺乳類において、必須微量元素として一般に広く認められているものには、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロムなどが挙げられる。1 これらの各元素は、それぞれ異なる特異的な生理機能を有しており、生体内で代替不可能な役割を果たしている。2

鉄は、赤血球中のヘモグロビンを構成して酸素の運搬に関与するほか、さまざまな酸化還元酵素の補因子として細胞呼吸やエネルギー代謝に不可欠な役割を果たしている。1 亜鉛は、数百種類に及ぶ酵素の構造形成や触媒機能に必要であり、蛋白質の合成、遺伝子発現の調節、免疫機能の維持、味覚の正常化などに深く関与している。1 銅は、鉄の利用を助けて造血作用を支えるほか、セルトプラスミンなどの酸化還元酵素の構成成分として結合組織の代謝や神経系の機能維持に寄与している。1

ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分であり、基礎代謝の調節や成長発育、特に中枢神経系の発達において極めて重要な役割を担っている。1 セレンは、抗酸化作用を持つグルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素の必須構成成分であり、活性酸素から細胞を保護し、過酸化脂質の蓄積を防ぐ働きをしている。1 マンガンは、骨の形成や糖質・脂質代謝に関与する様々な酵素の活性化因子として機能している。1 モリブデンは、プリン体の代謝や解毒作用に関与するキサンチンオキシダーゼなどの酵素の補因子として働く。1 クロムは、インスリンの作用を増強し、糖代謝や脂質代謝の正常化を補助する働きを持つ。1

このように、必須微量元素は個々の量が微小であるにもかかわらず、生体の生化学的反応や生理的調節において中核的な役割を果たしており、現代の栄養学や医学においてその摂取量と健康状態との関係が継続的に研究されている。2

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)微量元素: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12
  2. 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部: https://www.nihs.go.jp/hse/food-info/heavy-metals/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5