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HEALTH WORDS / 用語解説

恐怖

Fear

恐怖とは、危険や脅威に対する自然かつ適応的な情緒反応であり、生存を維持するために不可欠な生体の防御反応である。1 進化の過程において、生物が捕食者などの外敵や環境の危険から身を守るための警報システムとして発達した。2

恐怖を感じると、中枢神経系および末梢神経系において複雑な生理的反応が引き起こされる。 特に脳の扁桃体は、恐怖刺激の知覚と情緒的反応の生成において中心的な役割を果たしている。3 扁桃体が危険を認知すると、視床下部を介して交感神経系が急激に活性化される。3 これにより、副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌され、心拍数の増加、血圧の上昇、瞳孔散大、呼吸数の増加といった身体変化が生じる。4

これらの生理的変化は、生体が危険に対して即座に「戦うか逃げるか反応(Fight-or-flight response)」を選択あるいは実行するためのエネルギーを供給する目的がある。4 同時に、視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)も活性化され、ストレスホルモンであるコルチゾールが放出されることで、持続的なストレスや脅威に対処する体制が整えられる。3

恐怖には、生得的なものと後天的人生経験によって獲得されるものがある。 特定の脅威に対する恐怖は遺伝的にあらかじめプログラムされている場合があるが、多くの恐怖は条件付けや学習によって形成される。恐怖条件付け(Fear conditioning)は、中立的な刺激と嫌悪的な刺激が対提示されることで、中立的刺激単独でも恐怖反応が引き起こされるようになる学習プロセスである。3 この神経回路の可塑性には海馬や前頭前野が深く関与しており、記憶の固定化や消去において重要な機能を果たしている。3

適度な恐怖は危険を回避し生命を守るために有益であるが、その反応が過剰である場合や、現実的な脅威が存在しない状況で持続する場合には、臨床的な問題を引き起こす。 恐怖症や不安障害、外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患では、恐怖回路の調節異常や恐怖記憶の消去障害がその病態生理の基盤にあると考えられている。3 医学的および心理的な治療においては、認知行動療法や持続的暴露療法などを用いて恐怖反応の馴化や消去学習を促進するアプローチが行われる。2

参考文献・出典

  1. e-Gov法令検索: https://laws.e-gov.go.jp/ ↩
  2. 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/ ↩1 ↩2
  3. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
  4. CiNii Research: https://ci.nii.ac.jp/ ↩1 ↩2