HEALTH WORDS / 用語解説
糖尿病性ニューロパチー
Diabetic neuropathy
糖尿病性ニューロパチーとは、高血糖が持続することによって全身の末梢神経に障害が生じ、感覚障害や疼痛、自律神経症状などを引き起こす糖尿病の代表的な慢性合併症の一つである。1
糖尿病性ニューロパチーは、糖尿病網膜症、糖尿病腎症と並び、糖尿病の「三大合併症」の一つとして広く知られている。1
我が国における糖尿病患者数の増加に伴い、その合併症である本症の発症者も多数存在し、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となっている。2
発症の主なメカニズムとしては、長期にわたる高血糖状態が神経細胞自体の代謝異常を引き起こすことや、神経に栄養を供給する微小血管の障害による血流障害が複合的に関与していると考えられている。2
高血糖によってポリオール代謝の亢進や酸化ストレスの増大が生じ、これが神経の機能低下や構造的破綻を誘導することが分子レベルの病態として解明されつつある。1
臨床的な症状は多岐にわたり、侵される神経の種類や部位によって末梢神経障害と自律神経障害に大別される。2
末梢神経障害では、足先や手指などの遠位部から左右対称に感覚障害が発現することが多く、初期には足の裏のしびれ、ピリピリとした疼痛、知覚低下などがみられる。1
症状が進行すると、温痛覚や振動覚などの深部感覚が鈍くなり、痛みに気づきにくくなるため、靴擦れや小さな外傷を放置して足病変や足壊疽へと進展する危険性が高まる。2
また、運動神経が障害されると、足底の筋肉が萎縮して足趾の変形をきたし、歩行時のバランスが崩れる原因となる。1
一方、自律神経障害は、全身のさまざまな内臓機能や不随意運動の調節に支障をきたし、多彩な臨床像を呈する特徴がある。2
心血管系の自律神経が障害されると、起立性低血圧によるめまいや、心拍数の変動異常が生じ、重篤な場合には無痛性心筋梗塞を引き起こすリスクがある。1
消化器系においては、胃の運動機能低下による胃排出遅延(胃不全麻痺)が生じ、悪心、嘔吐、食欲不振、さらには便秘や下痢といった排便異常が繰り返し起こる。2
泌尿生殖器系では、膀胱の感覚低下や収縮力低下による排尿障害(神経因性膀胱)や、男性における勃起障害(ED)の原因となる。1
さらに、発汗異常として、下半身の無汗症と代償性の上半身多汗症がみられるほか、低血糖時の動悸や冷汗といった警告症状が感じられなくなる無自覚性低血糖を招くこともある。2
糖尿病性ニューロパチーの診断は、詳細な問診による自覚症状の聴取に加え、神経伝導検査や振動覚検査などの生理学的検査、アキレス腱反射などの腱反射の消失を確認することによって総合的に行われる。2
治療の基本は血糖コントロールの厳格な維持であり、食事療法、運動療法、薬物療法を適切に行って血糖値を正常化またはそれに近い状態に保つことが、神経障害の進行抑制および改善において最も重要である。1
また、自発痛やしびれなどの神経障害性疼痛に対しては、対症療法としてプレガバリンやデュロキセチンなどの鎮痛補助薬や代謝改善薬が用いられることがある。2
自律神経症状に対する治療としては、各臓器の症状に応じた対症療法薬の投与や、生活習慣の工夫が行われる。1
予防および重症化防止の観点からは、日頃からのフットケアの徹底が不可欠であり、足の