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HEALTH WORDS / 用語解説

乳脂肪球膜

Milk Fat Globule Membrane

乳脂肪球膜とは、乳汁中において脂肪滴を取り囲み、その安定性を保っている複雑な生体膜構造のことである。1

牛乳などの哺乳類の乳汁中では、エネルギー源である脂質(主としてトリアシルグリセロール)が微小な脂肪滴として分散している。1 この脂肪滴が水相である乳漿(ホエー)中で凝集したり合一したりするのを防ぎ、エマルションとしての状態を維持しているのが乳脂肪球膜である。1

構造的には三重層に近い複雑な膜構造をとっており、分泌される細胞の細胞膜や小胞体膜に由来する成分で構成されている。1 そのため、乳脂肪球膜は脂質二重層を基本としながらも、特異的なタンパク質や糖脂質、リン脂質を豊富に含んでいるという特徴を持っている。1

乳脂肪球膜を構成する主要な脂質成分としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンなどの多様なリン脂質が挙げられる。2 また、神経組織や細胞間の情報伝達、生体防御に関与するとされるガングリオシドなどの糖脂質も多く含まれている。2

一方で、構成するタンパク質成分も非常に多様であり、乳脂肪球膜特異的なタンパク質が複数見つかっている。1 代表的なものとしては、キサンチンオキシダーゼ、ラクトアドヘリン、CD36、PAS 6/7などが知られており、これらは乳脂肪球膜の構造維持だけでなく、様々な生体機能を発揮する上で重要な役割を担っている。1

近年の食品科学や栄養学の分野において、乳脂肪球膜が持つ様々な生理機能が注目を集めている。1 例えば、乳児の発育や免疫機能の形成、認知機能の維持や改善、さらには感染症の予防に対する効果などが研究されている。1 乳脂肪球膜に含まれるリン脂質や糖脂質、糖タンパク質が、腸管における病原体の吸着阻害や、脳神経系の発達に寄与していると考えられているためである。2

このように、乳脂肪球膜は単なる脂肪滴の安定化膜という物理的な役割にとどまらず、生体に対して多様な保健効果をもたらす機能的な生体成分として注目されている。1

参考文献・出典

  1. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji/60/2/60_119/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
  2. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/55/1/55_034/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2 ↩3