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HEALTH WORDS / 用語解説

分子標的治療薬

Molecularly targeted therapy

分子標的治療薬とは、癌細胞などの疾患に関与する特定の分子や遺伝子異常、タンパク質を直接標的として作用し、腫瘍の増殖を抑制または細胞死を誘導する医薬品である。1従来の細胞障害性抗悪性腫瘍剤が分裂の盛んな正常細胞をも無差別に攻撃して強い副作用を引き起こしやすかったのに対し、本薬は癌細胞の生存や増殖に特異的な分子メカニズムを狙い撃つことで、治療効果を高めつつ有害事象を軽減することを目指して開発された薬剤群である。2

分子標的治療薬は、その分子構造や作用機序によって大別され、主に低分子化合物と抗体医薬品に分類される。1低分子化合物は分子量が小さいため細胞膜を容易に通過することができ、細胞質内や核内に存在するキナーゼなどの酵素を標的としてその活性を阻害する特徴がある。2これに対し、抗体医薬品はタンパク質巨分子であり、細胞表面に発現している受容体や細胞外領域の抗原に特異的に結合することで、シグナル伝達を遮断したり、免疫系を介して標的細胞を攻撃したりする。1

具体的な作用機序としては、癌細胞の増殖因子受容体を阻害するもの、血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)などを標的として栄養供給を断つもの、特定の遺伝子変異によって常時活性化しているチロシンキナーゼをブロックするものなど多岐にわたる。1さらに近年では、免疫チェックポイント阻害薬のように免疫細胞のブレーキを解除することで患者自身の免疫機能を賦活化し、癌細胞を排除させる治療薬も分子標的治療薬の重要な一分野として広く臨床応用されている。2

分子標的治療薬の臨床的応用においては、バイオマーカー検査を用いたコンパニオン診断が極めて重要な役割を果たしている。1これは、患者の腫瘍組織や血液をあらかじめ検査し、特定の標的分子や遺伝子変異が存在することを確認した上で最も効果的と期待される薬剤を選択する個別化医療(プレシジョン・メディシン)の基盤となっている。2これにより、治療効果の向上が期待できる一方で、特定の分子だけに依存しない生存戦略を獲得した癌細胞が出現することによる薬剤耐性の獲得が臨床上の大きな課題となっている。1

また、分子標的治療薬は伝統的な抗がん剤とは異なる特有の副作用を示すことも知られている。2例えば、皮膚障害(ざ瘡様皮疹や爪囲炎など)、高血圧、消化管穿孔、間質性肺疾患、肝機能障害などが発現することがあり、これらは正常組織における標的分子の阻害や免疫系の活性化に伴う機序に基づいている。1したがって、これらの副作用を早期に発見し適切に支持療法や投与管理を行うことが、治療継続および患者のQOL維持のために不可欠である。2

参考文献・出典

  1. 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug/chemotherapy02.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
  2. PMDA 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/files/000154823.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6