HEALTH WORDS / 用語解説
パリエタル細胞
Parietal cell
パリエタル細胞とは、胃の胃底腺に存在する上皮細胞の一種であり、塩酸および内因子を産生・分泌する機能を持つ細胞である。1
日本語では壁細胞とも呼ばれるこの細胞は、胃液の主要な構成成分である強酸性の塩酸を胃腔内へ分泌し、食物の消化を助けるとともに、細菌などの病原体に対する生体防御の役割を果たす。1
また、パリエタル細胞はビタミンB12の小腸における吸収に不可欠な糖タンパク質である内因子も産生・分泌しており、ビタミンB12は回腸で吸収されるためにこの内因子と結合する必要がある。1
組織学的には、パリエタル細胞は胃底腺の頸部から体部にかけて多く分布しており、HE染色などの組織標本において好酸性の強い大型の細胞として観察される。1
この細胞の最大の特徴は、細胞質内に分泌小管と呼ばれる複雑な細胞膜の陥入構造と、多量のミトコンドリアが存在している点であり、これは塩酸を胃腔内へ能動輸送するために膨大なエネルギーを必要とするためである。1
塩酸の分泌機序においては、細胞内の水素イオン-カリウムイオンATPase(H+/K+ ATPase)、いわゆるプロトンポンプが中心的な役割を果たしており、細胞内で炭酸脱水酵素によって二酸化炭素と水から産生された水素イオンがプロトンポンプによって胃腔へ汲み出される。1
パリエタル細胞の塩酸および内因子の分泌は、神経性、ホルモン性、および液性因子によって厳密に調節されており、主な調節因子には迷走神経からのアセチルコリン、G細胞から分泌されるガストリン、クロム親和性細胞様細胞から分泌されるヒスタミンが含まれる。2
ヒスタミン、ガストリン、アセチルコリンがそれぞれの受容体に結合すると、細胞内シグナル伝達経路が活性化され、プロトンポンプが細胞質内の小胞から分泌小管の細胞膜へ移行することで、塩酸の分泌が亢進する。2
一方で、ソマトスタチンやプロスタグランジンなどは、パリエタル細胞の塩酸分泌を抑制する方向に作用し、胃粘膜の恒常性を維持している。2
臨床医学において、パリエタル細胞やプロトンポンプは消化性潰瘍や逆流性食道炎などの疾患に関連する重要な治療標的となっており、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウム競合型酸ブロッカー(P-CAB)などの薬剤は、この細胞からの酸分泌を強力に抑制することで治療効果を発揮する。2
さらに、自己免疫機序によりパリエタル細胞に対する自己抗体が産生され、細胞が破壊されることで胃酸分泌が低下または消失する疾患としてA型胃炎(自己免疫性胃炎)があり、これが進行すると内因子の欠乏による悪性貧血を引き起こすことが知られている。1