HEALTH WORDS / 用語解説
ライソソーム病
Lysosomal storage disease
ライソソーム病とは、細胞内の細胞小器官であるライソソームに存在する特定の加水分解酵素の先天的な欠損または機能低下により、分解されるべき基質が分解されずにライソソーム内に蓄積し、さまざまな臓器に進行性の障害を引き起こす遺伝性疾患の総称である。1
ライソソームは、細胞内における不要物の分解や代謝を担当する重要な小器官であり、内部には酸性環境で働く多数の加水分解酵素が存在している。2
これらの一連の酵素のいずれかが遺伝子の変異によって正常に働かなくなると、本来なら分解されてリサイクルされるはずの糖脂質や糖鎖、グリコーゲンなどの基質がライソソームの内部に蓄積していく。1
蓄積した物質は細胞や組織の機能を徐々に障害するため、中枢神経系、骨格、肝臓、脾臓、心臓など、全身の多様な臓器にわたって深刻な病態をもたらすことになり、全体として進行性の臨床症状を示す。2
ライソソーム病には数多くの疾患が含まれており、蓄積する物質の種類や欠損している酵素の違いによって、スフィンゴリピドーシス、ムコ多糖症、糖原病、オリゴ糖症などに分類される。1
代表的な疾患としては、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、ムコ多糖症などが挙げられ、それぞれに特有の遺伝形式や症状の現れ方、重症度が認められる。2
多くのライソソーム病は常染色体劣性遺伝形式をとるが、ファブリー病やハンター病のようにX連鎖遺伝形式を示すものも含まれており、家系内での遺伝学的評価や保因者診断が重要視される。1
発症の時期や臨床像は多様であり、乳児期早期から重篤な神経症状や内臓肥大を呈する重症型から、成人期になってから比較的軽度な症状で発見される遅発型まで幅広いスペクトラムが存在する。2
診断においては、患者の血液や白血球、皮膚線維芽細胞などを用いた酵素活性の測定が行われ、低下あるいは欠損を確認することが基本となる。1
さらに、原因となる遺伝子の塩基配列を解析して遺伝子変異を同定することが、確定診断や将来の遺伝カウンセリングにおいて極めて重要な役割を果たしている。2
近年では、一部のライソソーム病に対して不足している酵素を外部から定期的に投与する酵素補充療法が実用化され、症状の進行抑制や生命予後の改善に大きな成果を上げている。1
また、異常な基質の生合成自体を抑える基質合成抑制療法や、残存する酵素の安定性を高めるシャペロン療法など、薬物療法の選択肢が広がりつつある。2
中枢神経症状を伴う病型や重篤な造血器障害に対しては、造血幹細胞移植などが試みられることもあるが、効果や適応には限界があるため早期発見が求められる。1
こうした背景から、一部の自治体や医療機関では新生児マススクリーニングの対象疾患としてライソソーム病を導入し、症状が発現する前の超早期からの治療介入を目指した取り組みが進められている。2