HEALTH WORDS / 用語解説
炎症性
inflammatory
炎症性とは、生体が感染、物理的刺激、化学物質、虚血などの有害刺激を受けた際に、それを排除して組織を修復しようとする一連の生体防御反応である炎症を引き起こす性質、あるいはその状態を指す医学・生物学用語である。1
生物学および医学において、炎症性反応は免疫系が活性化されることで引き起こされる。生体に対する侵襲が加わると、血管系の反応や免疫細胞の動員が生じる。この過程では、局所の血管拡張や血管透過性亢進が起こり、白血球などの血漿成分が組織へ遊走することで、発赤、熱感、腫脹、疼痛、そして機能障害という炎症の主徴が形成される。2
分子生物学的レベルでは、炎症性の病態や反応はサイトカイン、ケモカイン、プロスタグランジン、ロイコトリエンといった様々な炎症性メディエーターによって調節されている。これらの生体内物質は、免疫細胞や血管内皮細胞から産生され、シグナル伝達経路を介して周囲の細胞に作用し、免疫応答を増幅あるいは制御する役割を担っている。3
臨床医学の領域において、炎症性は多くの疾患の病態生理を理解する上で中心的な概念となっている。例えば、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患および炎症性腸疾患では、慢性炎症が持続することによって組織障害や機能不全が引き起こされる。これらの疾患に対する治療薬としては、炎症性サイトカインの働きを阻害する抗体医薬品や、ステロイドなどの抗炎症薬が広く用いられている。4
また、動脈硬化症、2型糖尿病、肥満といった生活習慣病においても、低悪性度の慢性炎症(微小炎症)が病態の進展に関与していることが明らかにされている。脂肪組織や血管壁における持続的な炎症性反応が、インスリン抵抗性や血栓形成を促進し、心血管疾患のリスクを高める要因となることが研究されている。5
さらに、腫瘍生物学の分野では、がん微小環境における炎症性の変化が腫瘍の発生、浸潤、および転移に深く関与していることが示されている。腫瘍組織周辺に集積する免疫細胞や線維芽細胞が分泌する炎症性サイトカインは、がん細胞の増殖を助長し、血管新生を誘導する環境を形成するため、炎症性と発がんプロセスとの関連性についての研究が精力的に進められている。6
参考文献・出典
- 南山堂 医学大辞典: https://www.nanzando.com/ ↩
- MSDマニュアル プロフェッショナル版: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/免疫学-アレルギー疾患/炎症と免疫応答/炎症 ↩
- 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-078.html ↩
- 国立国際医療研究センター 病院: https://www.ncgm.go.jp/ ↩
- 国立循環器病研究センター: https://www.ncvc.go.jp/ ↩
- 国立がん研究センター 研究所: https://www.ncc.go.jp/jp/ri/index.html ↩